SSブログ

映画『パラサイト 半地下の家族』@OSシネマズ神戸ハーバーランド [映画]

映画『パラサイト 半地下の家族』
010.jpg
カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞した映画だということで観に行った。パラサイト(寄生・共生)というと、99年ごろ流行った「パラサイト・シングル(Parasite single)」という言葉が思い浮かぶ。大学を卒業して就職しても家を出ず、親の家にずっと暮らしている若者たちを表す言葉だったが、今検索してもこの映画しか出てこないのは、反響の大きさを表しているのだと思う。前の年に同じパルムドールを受賞した『万引き家族』と似たコンセプトの映画のようだったが、実際観てみるとやはりお国柄の違いもあるようで、興味深かった。
001.jpg
「半地下の家族」とは、ソウル市の最下層の貧民街にあるビルの、半分地下に埋もれたような部屋に暮らす人たちのことを指すようだが、実際そういう半地下の部屋を持つビルが多いのかどうかは、寡聞にして知らない。部屋の細く高い窓からは、路地が下からの目線で見え、住んでいる人たちが本当に最下層の暮らしをしていることを象徴しているように思われた。水圧の関係か部屋の一段高いところにあるむき出しのトイレも、何か汚物にまみれて生活しているかのような感じを受けた。
002.jpg
003.jpg
主人公は一応キム・ギウという若者なのかな。妹もいて、どちらも大学受験に何度も失敗しているが、能力はありそうなのに、予備校に行く金がないためプータロウをするしかない。父親はいくつも事業に失敗し、元ハンマー投げの選手だった母親も加えた家族で、宅配ピザの箱の製作の内職で糊口をしのいででいる始末だ。
004.jpg
005.jpg
そんなキム・ギウのもとに幼馴染のソウル大生から、留学中に家庭教師の代役を頼まれることから物語は急展開していく…。極端な格差社会にして学歴社会でもある現代韓国だが、一流大学に行くためにもお金がないとどうしようもないわけで、二人の幼馴染の間にもすでに格差が厳然とあるわけだ。
006.jpg
ひょんなことから上流階級の娘の家庭教師をすることになるが、続いて妹が美術の家庭教師に、父親がお抱え運転手に、そして母親が家政婦としてそのお邸に入り込んでいく過程は、素晴らしく頭脳的で、いつの間にか上流階級の家族の間に寄生していくさまは痛快なほどである。しょぼくれた生活をしていた少し前からは考えられないほど家族に取り入っていた。こんな素晴らしい能力?を持ちながら、これまでそれを生かせずにいたのは、まさに貧困故であったと言いたいのだろうか。
007.jpg
008.jpg
ただ、物事はそううまくいくはずもなく、もう一組のパラサイト家族との暗闘が絡んで、事態はとんでもない悲劇に突き進んでいく…。
009.jpg
話の中で北の首領様を揶揄している場面もあったので、ひょっとしたらこの家族は脱北者の家族なんだろうかなと思った。現代日本社会もたいがい格差社会になりつつあるが、韓国のそれはさらに輪をかけたすさまじさのように見えた。そして他の多くの国々もまた格差社会になってしまっているこの世界に、強烈な鉄槌を加えた映画なのだと思った。私たちはもっと怒らなければならないのだというように。


第72回カンヌ国際映画祭で最高賞!『パラサイト 半地下の家族』予告編
https://www.youtube.com/watch?v=VG9PjxVMd08

nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:映画