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1004中秋の名月とドラマ『眩(くらら)~北斎の娘~』 [日々の雑感]

今年の中秋の名月。北斎父娘もかつて同じ月を見たんだろうな。
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葛飾北斎(1760~1849)の娘「お栄」(筆名「葛飾応為」)のことを知ったのは、2年前に観た映画『百日紅~Miss HOKUSAI~』によってであった。このアニメ映画の原作は漫画家にして江戸風俗研究家である杉浦日向子の『百日紅』(1987年)である(雑誌連載はもう少し前)。葛飾北斎の陰に彼に肉薄する才能を持った娘がいたことを初めて知って驚いた。私が浅学であったせいばかりでなく、当時多くの人の認識は似たようなものではなかったかと思う。
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映画から二年、原作が書かれてからだと30年後になるが、新たに直木賞作家の朝井まかてによる小説『眩(くらら)』(2016年)がテレビドラマ化されたので録画していた。
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同じ頃に「歴史秘話」でもこの父娘が取り上げられていたので先にそれを観たが、「お栄」の作品(10点しか現存していないそうだ)や、北斎の作品でもこの部分はお栄が描いたのではないか、というようなことが詳しく解説されていて興味深かった。この30年でずいぶん研究が進んだのだろうなと推察された。
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宮崎あおいと長塚京三が演じる父娘は職人気質(芸術至上主義)で反骨心に富み、絵以外のことは顧みず、ひたすら画作に打ち込む生き様を見事に演じていたように思った。父親は酒も煙草も嗜まなかったのに、お栄はどちらも相当嗜んだようで、そんなところにも、父親の後をひたすら追いかけながらも独自の道を歩んでいくお栄の生きざまがうかがいしれて興味深かった。結婚に失敗して出戻ったお栄が、一人だけ心を許した弟子筋の絵師・善次郎との秘められた恋のエピソードはフィクションだろうが。ドラマのセットや江戸の町の情景(一部CGと思われる)は、『百日紅』のアニメをかなり参考にしたのかなと思った。
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お栄の作といわれるもの(たぶんw)。
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お栄が父親と違っていたのは、色彩と光の陰影に関する感覚だった。当時の西洋の絵画からも影響を受けて、北斎とは違うセンスを身につけていった。素人目には確とは分からないが。北斎晩年の作品、信州小布施の「岩松院」の天井絵『大鳳凰図』の下絵と、実際の天井画(お栄が背景を彩色したのではないかと言われている)との違いからもうかがい知れる。
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女性の絵師が日の目をみることが少ないのは時代のせいもあるだろうが、そんな時代にあって、名声など求めずとも自分の絵を追求し続けたお栄はすごいなあとつくづく思う。

すごいと言えば、北斎は90歳で亡くなるのだが、死の直前「天我をして五年の命を保たしめば 真正の画工となるを得べし」と言ったという。大家と言われるようになっても尚今の自分に満足せず、より高い境地を目指し続けた北斎ならではの言葉ではある。我々が呟いても単なる泣きごとにしかにしか聞こえないだろうけど。
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「生誕~年」というわけでもなさそうなのに、近々大阪でも『北斎展』があるようだし、北斎ブームがなぜか巻き起こっている感じだ。いつか小布施にも行って「大鳳凰図」も見てみたいものだと思ったことだよ。


夕食後散歩をする家人について、月見がてら歩いた。ダイエーの方に行くと、建って40年近くなるが未だ未来都市の雰囲気を保つ高層マンションと名月が妙にマッチしていた。
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眩


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コメント 1

サンフランシスコ人

「お栄の作品.....10点しか現存していないそうだ...」

http://www.clevelandart.org/art/1998.178?collection_search_query=katsushika+oi&op=search&form_build_id=form-X4aCEP4mOoXYGS2UY6h8ldMQvKGamzta9QELPsBkCOc&form_id=clevelandart_collection_search_form

Operating on Guanyu's Arm

1840s
Katsushika Ōi

(Japanese, about 1800-after 1857)

クリーブランド美術館....1作品を収蔵.....
by サンフランシスコ人 (2019-07-16 07:22) 

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