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映画『万引き家族』@OSシネマズ神戸ハーバーランド [映画]

映画『万引き家族』(是枝裕和監督)
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第71回カンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールに輝いた作品というので、一度は観ておかなくちゃと思っていた。是枝裕和監督の作品はこれまでちゃんと観たことがなかったと思う(『海街diary』もビデオに録ったきりまだみてない)が、04年の『誰も知らない』で主演の柳楽優弥が史上最年少でカンヌの最優秀男優賞を受賞を受賞して以来、心の片隅で気にはなっていた。一見地味そうな題材が多いので、テーマとしては興味があるけど映画としては…、と二の足を踏んでいた。
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何かのインタビューで、主演のリリー・フランキーさんが、カンヌは獲れそうな気がしていたが、日本でこれほどヒットすることは予想外だった、という意味のことを語っていたが、自分も含めて多くの日本人が、「賞をとったから」と観に行ったことは否めないだろう(笑)。「万引き」という題材も、公明正大な多くの日本人にとっては忌避すべきもの、こういうテーマでカンヌに出さなくても、と思う人は少なくないのかもしれない。だが、この映画で提示されているものは、正に現代日本社会が直面しているであろう問題であることは、映画を観れば分かることではある。

映画の舞台は、再開発が進む東京の下町。地上げに抗しながら古い一軒家で暮らす祖母・初枝(樹木希林)のもとに、日雇い労働者の父・治(リリー・フランキー)とクリーニング店で働く妻・信代(安藤サクラ)、JK見学店でバイトをしている信代の妹?亜紀(松岡茉優)に加え、息子?の祥太(城桧吏)もいつからか一緒に暮らしている。ワーキング・プアの集まりのような家族なので、祖母の年金も当てにしつつ、足りない分は父と息子のコンビで万引きをして暮しを賄っている…。一見本当の家族に見えるがその内実は…。
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ある日、近所の団地の廊下で凍えている幼い女の子を見つけ、思わず連れて帰る。その女の子ゆり(佐々木みゆ)は母親から虐待を受けていた。新しい家族が入ったことで、一見順調そうに見えた一家に次第に綻びが出てきて…。
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この話に出てくる幾組かの「本当の家族」はどれも何らかの破綻をしているように描かれている。一方、「他人同士が集まった家族」の方は、物語の展開上は必然的に<破綻>してしまうのだが、その過程の中では、本物の家族以上の<絆>を感じさせる場面がいくつも出てくるように思われた。血のつながっている家族よりも、赤の他人同士が一緒に暮らしている方が、より<家族>を感じさせるとしたら、家族とはいったい何なのか。
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戦後70年の流れの中で、大家族制が崩れ、核家族化が進み、職場の人間関係も希薄になってきている現代日本社会(特に都会)で、唯一縋れるはずの家族の絆が希薄になってきているかもしれないことに、我々はもっと恐怖を覚えるべきなのかもしれない。そんなことを考えながら映画を観終えた。カンヌの映画人たちの方が、我々日本人がともすれば見過ごしがちである「現代日本の病理」に対して鋭敏に反応しているのかもしれないな、と思ったことだよ。
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この映画は、ドキュメンタリー映画を観ているような、不思議なリアリティを感じる部分がままある。
シナリオを確定させず、出演者達に実際「生活」させながら映像やストーリーを組み上げていく、是枝監督の手法のなせるわざなのだろう。特に2人の子役たちがナチュラルな演技をしていたのが目を引いた。最近観た河瀬直美監督の映画もどこか似た所があるなあ、と思ったことだ。



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