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Changes(木の葉の丘) [私の好きな20世紀の唄たち] vol.69  [20世紀の歌Ⅱ]

Changes (木の葉の丘)
written by Phil Ochs 1966
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この歌を初めて聴いたのは、森山良子のセカンドアルバムに入っていた日本語版によってであった(1967「愛する人に歌わせないで」所収)。当時中学生だったと記憶しているが、兄姉たちが買って帰った数枚のアルバムの中の一つであったので、何もわからぬまま何度も聴いていたと思う。A面がオリジナル、B面がアメリカのフォークやスタンダード(フランスのもあったか)を原語や訳詞で歌っていて、今振り返ってもいいアルバムだった。
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その後大学に入ってから、ブラフォーやライトフットが歌っているのを聴いたが、作者のフィル・オクスについて知ったのはごく最近のことである。昔は、誰それが歌っているあの曲というような受け入れ方しかしていなかったのであった。
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フィル・オクス(1940~1976)の音楽的デビューは1962年頃らしい。時に比較されるボブ・ディランの最初のアルバムがやはり62年だからほぼ同時代といっていい。ディランが "Blowin' In The Wind" や "The Times They Are A-Changin'" などの歌でプロテスト・シンガーの旗手となりながら、そこから脱却し、自らの音楽を進化させていったのに対し、フィルは生涯を通じてプロテスト・ソングの枠から出られずにいたとも言われている。

彼のことをよく理解もしていないのでこれ以上の言及は避けたいが、この項で取り上げたフィルの歌は、同じ"Change"という語を使いながら、ディランの「時代は変わる」とはずいぶん趣を異にしていると感じられた。ディランが旧態依然とした社会に対して変革の必要性と可能性を声高に語っているのに対して、フィルの歌は常に変化して生まれては消えていく、生きとし生けるものの定めのようなものを歌っているように思えた。

観念的・哲学的な字句が使われていて、うまく訳せない部分も多いのだが、私たち日本人(東洋人?)には、鴨長明の『方丈記』にあるような仏教的無常観などを連想させるような世界観が表されているような気がする。しみじみとしたいい詞だと思うのだが、若いソング・ライターがこれから様々な可能性を切り開いていく、というよりは、様々な体験を経て、一種の諦念にも似た心境に到達している、というようにも見えなくはない。この曲が彼のその後を決定づけたなどと言うつもりもないのだけれど。

森山良子が歌っている邦題「木の葉の丘」の訳詞をしたのは、ビートルズなどのプロモートをしていた星加ルミ子という人らしい。原詩の内容を日本語に乗せるのは難しいと思われるが、原作者の意図するところをやさしい言葉で、うまく表現しているように思う。
一部を紹介すると、

世界のどこでさえも生まれるものと
消えるものがすべてを変える
いつでもChanges
朝(あした)の祈りさえもざわめきの中に
いつのまにか消されてしまう
いつでもChanges
生きてるつながりさえ細い鎖だけ
移り変わる世界はいつでも
いつでもChanges

中学生の自分もこの歌を口ずさみながら、はかなさのようなものを感じていたと思う。人生の終盤に差し掛かってきた自分には、また昔とは違った感慨を以て感じられるようだ。彼がそう長くはない生涯の間に作った多くの曲を寡聞にして知らずにいるが、この曲と、バエズやPP&Mも歌っている "There But for Fortune" などの歌は、これからも大切に歌っていきたいと思った。

youtubeでは実に多くのカバーがあげられているが、本人のものを含めていくつか紹介しておく。
最近ではかのセルダム・シーンも取り上げているなあ。

Phil Ochs - Changes
https://www.youtube.com/watch?v=rlVfVBFdMaM
The Brothers Four - Changes 木の葉の丘
https://www.youtube.com/watch?v=soXt6L7FFDs
GORDON LIGHTFOOT ~ Changes ~
https://www.youtube.com/watch?v=cybVspvzb9g
木の葉の丘 森山良子 
https://www.youtube.com/watch?v=RqrCW0FpisM
Neil Young Changes
https://www.youtube.com/watch?v=MUwYaHXxIkg
Changes The Seldom Scene
https://www.youtube.com/watch?v=yn3Zw4mwzRE
Changes :: Tony Rice (Nightflyer)
https://www.youtube.com/watch?v=zWHrjVNM3FY


チェンジス(大意。原詩は検索してみてくださいね)

僕のそばに座って空気と同じくらい密着して
灰色の記憶の中で
僕がチェンジという言葉をもてあそび
紡いだ言葉の中に彷徨い
浮かんだ映像について夢想するのに
しばし付き合ってくれ

夏の間緑だった木の葉が秋には赤く色づき
茶色や黄色に変わり
やがては変化という輪廻の循環の中に
とり込まれて枯れてしまう

若かったころの光景は温かいイメージとして心に残るけれど
その輝きは実は影のような幻に過ぎず
変化という運命の糸にからめ取られたものだと
いつか気付いてしまう

この地球は狂おしく回転していて
闇の中にただよい
霞の空洞の中を通りながら揺れ
星たちが太陽の周りを競争するように回るのは
変化という節理に燃える宇宙を巡る旅だ

時間という魔法は夜に輝き
森の全ての恐怖は無くなってしまうように見えるが
それらの幻も変化の中で朝日の光の一閃で
奪い取られてしまう

情熱も奇妙なメロディを奏でてバラバラになっていく
火が時には冷たく燃えるように
風に舞う花びらのように
変化という魂の銀の糸に操られる人形みたいに




Live Again!


Changes


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Loo Eli

アメリカ歴代最高の作詞家でありメロディーメーカーは圧倒的にオクス. 私もディランが好きですが、フィルが書くことができなかったものは何も書きませんでした。確かに彼は自分が政界に大きな影響を与えないと意識した。芸術のために悩みたかったので苦しみから霊感を受けった。悲しみにひたりだった。美しさを生み出すのは良いメッセージよりも重要だったから。
by Loo Eli (2021-03-26 21:24) 

Loo Eli

そして投稿ありがとうございます。 たった1つの小さな修正。 変更は1965年の春に書かれました。彼は妻から離れたばかりで、カナダをツアーしていました。
by Loo Eli (2021-03-26 22:08) 

Loo Eli

そしてごめんなさい ! 変更ではなく、 木の葉の丘。


by Loo Eli (2021-03-26 22:10) 

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