SSブログ

CROSSROAD[私の好きな20世紀の唄たち]vol.18 [20世紀の歌]

CROSSROAD BLUES(四辻ブルーズ) by Robert Johnson

作者のロバート・ジョンソンは1910年代に生まれ,1930年代に活躍し27才という若さで世を去った『ミシシッピ・デルタ・ブルーズ』の天才的なギタリストであったという。また,かのエリック・クラプトンが若い頃この人を神様のように信奉していたということも,この人を伝説の巨人にしているエピソードの一つだろう。実はクラプトンのアルバムでこの曲は知っていたのだが.作者であるジョンソンのことは何も知らなかった。その後私がこの人を知ったのは,山崎まさよしが山口時代にやはり彼をアイドルとしていたということを,テレビの特集番組で見たからであった。

その番組の中でもこの曲は象徴的な曲として取り上げられていたように思う。歌詞はいたってシンプルで個人的な体験を歌っているようにも思えるが,一つ一つの言葉が個人的であると同時に共同の心象を反映しているかのようにも思える。歌の中の主人公はどこかへ出て行こうとして四つ辻までやってくるのだが,かれはそこからどこへ行くこともできない。それはヒッチハイクする車が来ないからだけではないようだ。何かが彼を押しつぶしどこへも行けないようにしてしまう。

それは17世紀以来ずっとしいたげられ続けてきたアメリカ黒人の歴史なのかもしれないし、人間存在そのものの不可解さに因るものなのかもしれない。とにかく彼は今の場所からどこかに出て行こうとしているのにどこにも行けず,そこに沈み込みへたり込んでしまうしかないのである。ローズデールという街は特定の街かもしれないし,天国か楽園の象徴なのかもしれない。

生きていく中でどうしようもなく立ち止まってしまって,どこに向かって足を踏み出していいのかわからない時によく出くわす。そんな時にこの歌を聞いたらもっと絶望的な気分になるだろうか。それとも逆に何か共感と勇気を与えられるだろうか。

この歌にまつわる伝説として「彼はこの四つ辻で悪魔に魂を売り,その代わり最高のブルースマンとしての才能を手に入れた」というものがある。歌の中身と同様不可思議な伝説である。そういえば以前見た映画「O-Brother」の中でも悪魔に魂を売った黒人ブルースマンが出ていたが,ジョンソンがモデルだったのかな。
(初出02.03.22)

<追記>後になってwebを見ていたら,ボブ・ディランが若い世代の人たちに向けて語った次のような言葉があった。「世に出ようとしているソング・ライターやシンガーに言いたいのだが、今流行しているものはすべて無視し、忘れるようにした方がいい。ジョン・キーツやメルヴィルを読んだり、ロバート・ジョンソンやウディー・ガスリーを聞いた方がよっぽどいい。・・・」なかなか含蓄のあることばだな,と思ったので引用しておく。

youtubeは話題にした3人のものを。
Robert Johnson- Crossroad
http://www.youtube.com/watch?v=Yd60nI4sa9A
Crossroad - Yamazaki Masayoshi
http://www.youtube.com/watch?v=YEWRKzLewjA
Eric Clapton performs "Crossroads" Live!
http://www.youtube.com/watch?v=MtLhPeLB9bA

四辻ブルーズ

俺は十字路の所まで歩いていって,そこにひざまずいた
俺は十字路の所まで歩いていって,そこにひざまずいた
天上にいる神に恵みを請うた「どうかお救い下さい」

俺は十字路の所まで歩いていって,車を拾おうとした
俺は十字路の所まで歩いていって,車を拾おうとした
誰も俺を知らないみたいで,皆通りすぎていった

俺はローズデールに行きたいんだ,車に乗せてくれ
俺はローズデールに行きたいんだ,車に乗せてくれ
ベイビー,お前は川沿いの安酒場にいたらいいさ

お前は走れる,お前は走れる,友達のウィリー・ブラウンは言う
お前は走れる,お前は走れる,友達のウィリー・ブラウンは言う
でも俺はずっと十字路に突っ立ったままで,そこに倒れ込むだろう

CROSSROAD BLUES

I went down to the crossroads, fell down on my knees.
I went down to the crossroads, fell down on my knees.
Asked the Lord above for mercy, "Save me if you please."

I went down to the crossroads, tried to flag a ride.
I went down to the crossroads, tried to flag a ride.
Nobody seemed to know me, everybody passed me by.

I'm going down to Rosedale, take my rider by my side.
I'm going down to Rosedale, take my rider by my side.
You can still barrelhouse, baby, on the riverside.

You can run, you can run, tell my friend-boy Willie Brown.
You can run, you can run, tell my friend-boy Willie Brown.
And I'm standing at the crossroads, believe I'm sinking down.



The Complete Recordings


クリームの素晴らしき世界


nice!(0)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:音楽

nice! 0

コメント 2

PON

そうだったんか。
これがオリジナルか

馴染みがあるのはこれだな。
http://www.youtube.com/watch?v=way_ATIDd0c
by PON (2014-08-03 11:58) 

KAKKIN

tell
の意味がわかりました。
ありがとうございます。

ブラウンから言われた言葉
おまえなら、走っていけると言われたけれど
神に頼んでみたけれど、ヒッチハイクできず、日が沈み、途方に暮れている

という感じですね。
by KAKKIN (2021-01-12 11:39) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0