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映画『ゴッホ~最期の手紙~』@シネ・リーブル神戸 [映画]

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『ゴッホ~最期の手紙~』(原題:"Loving Vincent")

ゴッホの映画をやっていると偶然知って観ることにした。ゴッホについては若い頃小林秀雄の『ゴッホの手紙』を読んでいたく感動した記憶がある。その後読み返そうと思いながら今に至っている。弟のテオに出した手紙の全てを紹介したもので、あの小林秀雄をして「もはや私の感想を書き加える余地はない」と言わしめた手紙であった。また本ブログの「20世紀の歌」でも、ドン・マクリーンがゴッホのことを歌った "Vincent (Starry Starry Night)" を紹介したことがあったので、それもあって観ることにしたのだった。

シネ・リーブルでは字幕版と吹き替え版が併映されていて、余り考えずに14時過ぎからの吹き替え版の方を選んだ。行くとチケット売り場に列ができていて、この映画館ではあまり見られない光景なので驚いた。席もほぼ満席で一列目と二列目の右端しか空いていなかったので、二列目を選んだ。ゴッホ・ファンはこんなに多いのかとも思った。
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始まってみると、ゴッホの著名な作品に描かれた人物が、油絵のまま「動いて」演技をしているという具合だった。事前に知らなかったのだが、製作に際して120人の画家が実際にゴッホの絵とそれが動くさまを油絵で描いたものをアニメのようにつないだものだと知った。多くのレビューにあるように、まさに「全編が動く油絵」だった。これが評判になって人気があとから出てきたのかな、とも思った。

10分ぐらいたって、「どうも字幕版だったのかな」と思っていると、突然横のドアが開いて、「手違いで字幕版を上映してしまいました。改めて吹き替え版を初めから上映させていただきます。」とアナウンスがあり、場内から「ええっ!!」という声が上がった(私もその一人)。このままでもいいのにと思ったが、吹き替え版を改めて観だすと、やはり分かり易いので、この映画に関しては吹き替えの方がいいな、と思ったことだよ(ちなみに、終映後ミスのお詫びにといって無料招待券が全員に配布された。ラッキー)。
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物語はゴッホが自殺したとされる年の二年後から始まる。郵便配達人ジョゼフ・ルーラン(ゴッホの絵に描かれている)の息子アルマンは、父親からパリ宛の一通の手紙を託される。それはゴッホが死の直前に弟テオに書いたが、出されずに残されていたものだった。アルマンはテオの消息をたどり、彼の死を知る。その後ゴッホが最後に過ごした北フランスのオーヴェル・シュル・オワーズを訪れ、関係者に聞き込みをしたりして調べるうちに、彼が本当に自殺したのかという疑問が生まれて…。
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物語はサスペンスタッチで進行するが、私にはそれはどうでもよいことのように思われた。それよりゴーギャンや弟テオをはじめ、ゴッホと関わった人たちとのやり取りを通して、彼が何を求め何に苦しみ何を描きたかったのか、ということを垣間見ることができたような気がして、それが一番よかったような気がする。「動く絵」も素晴らしかったが、全編それが続くのは若干疲れも覚えた。静止画でナレーションの部分をもっと増やしたら、落ち着いて観ることができたようにも思う。ともあれ素晴らしい作品なので、いつまで上映しているかは分からないが、一度は観るべき映画だと思う。
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エンド・ロールでドン・マクリーンの曲(歌っているのは Lianne La Havas )が流れたので妙に感動した。youtube にあったので引用しておく。
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Lianne La Havas - "Starry Starry Night" (Loving Vincent OST)
https://www.youtube.com/watch?v=vp5qJlr4go0

今私はわかる気がする
あなたが私に言おうとしていたことが
どのようにしてあなたが失いそうな正気を
守ろうとたたかい
どのようにしてあなたが人々の心を
解放しようとしたか
( "Vincent (Starry Starry Night)" より)
ゴッホの手紙 (角川文庫)


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