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『藤田嗣治』展@兵庫県立美術館 [展覧会]

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もともと昼夜転倒気味の生活をしているが、連日の酷暑に加えてリオ・オリンピックまで始まって、生活リズムはほぼ崩壊状態であるw  夕食の後ひと寝入りして10時ごろ起きだして、深夜までTVをつけながらネットを見たり、今度やろうと思う曲の歌詞やコードを確かめたりするような日々である。

珍しく朝8時過ぎに起きたので、負の連鎖を断ち切ろうと外へ出た。映画も観たいものがいくつかあるが、時間が合わなかったりでうまく決まらない。そこで、以前何度か行ったことのある兵庫県立美術館で『藤田嗣治』展をやっているというので行ってみることにした。退職後も送られてくる割引券で半額になるというのもあった。なんだか申し訳ない気もするが、現職の頃はほとんど使わなかったので、まあいいか。
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軽い気持ちで行ったのだが、展示されている作品群は全部で120点以上もあって、なかなか見ごたえのあるものだった。

藤田嗣治は教科書などに載っているものや、時々話題になっている時にいくつか見ただけで、あの特徴あるおかっぱ頭とチョビひげぐらいが印象に残っていたぐらいだった。展示されている作品を説明を読みながら観て歩いただけで2時間近くかかってしまった。飽きっぽく、これまで絵画展に行ってもいくつかの目玉作品を観て後はさっと通り過ぎるような鑑賞者でしかない私にしては異例のことである(笑)。

文学作品を読む場合も、全集を読むことで初めてその作家の全貌が分かるということがあるが、それに近い感じで藤田嗣治という一人の画家が第1次大戦から戦後に至るまで日本とフランスで、毀誉褒貶にさらされながら、いかに生きていったかということを年代記風にたどることができた。

生涯で4度の結婚をしたことにも興味を惹かれたが、黒田清輝に師事していた初期の作品、第一次大戦後のパリで画壇の寵児となった頃の作品(中にはキュビズム風の作品やゴッホ風の作品など、彼が色々なスタイルを試みていたことがよくわかる)、戦時中従軍画家として戦地に赴いて描いた戦意高揚のための作品、戦後日本を追われるように再びパリに赴き、洗礼を受け、フランス国籍を取得した頃の宗教画まで、目まぐるしいまでの画風の変遷をたどることができた。

目をひいたのは、面相筆という日本画用の細筆を使って輪郭線を描くという、洋画の中に日本画の要素を取り入れているところだった。日本の画壇からは日欧の折衷として批判の的になったようだが、当時のパリ画壇では斬新なものとして受け入れられただろうということは、門外漢の私でも容易に想像できる気がした。
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また戦時中の戦争画であるが、当時の軍部からの強い要請でやむなく描いたのか、本人もお国のために積極的に描こうとしたのかは定かでないが、「アッツ島玉砕」の絵などからは、単に戦意高揚のためというにとどまらず、戦争の悲惨さ、愚かさが結果として強く描き出されているように感じられた。文学者たちの戦争協力作品と違って、対象をそのまま描き出そうとすれば、その意図がどのようなものであれ、真実を描き出してしまうという、絵画というものの本質を垣間見ることができた気がした。
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兵庫県立美術館は以前王子動物園の西にあったのが、新たにHAT神戸に建てられてもう14年になる。駅からやや遠いが、安藤忠雄設計の建物も美しく、ゆったりと過ごせるいい美術館である。これからも時々情報を調べて訪れたいと思ったことだよ。
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付録:嗣治の扮装をして記念写真を撮るというコーナーがあったw
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※絵の画像は「東灘ジャーナル」からいただきました。


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