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映画『静かなる情熱 エミリ・ディキンスン』@神戸シネリーブル [映画]

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この伝記映画の主人公である「エミリ・ディキンスン」のことは寡聞にして知らなかったが、何人かの知人がいい映画だと言うので観ることにした。19世紀のアメリカのニューイングランドの小さな町アマストで育ち、生涯家族の住む屋敷から出ることなく、ひたすら詩作に打ち込んだエミリの詩は、生前わずか10編しか発表されなかったが、彼女の部屋に遺された1800篇の詩作は死後親族や研究者たちによって発表され、20世紀になって正当な評価を受けることになったという。
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彼女の暮らしたアマストにはかの新島襄や内村鑑三も留学した「アマースト大学」があり、彼女の祖父が創設に関わったとも言われている。撮影には彼女の住んでいたお屋敷も使われたらしい。先日行った「明治村」にも似たようなお屋敷があったなあ。また、映画の中では南北戦争のゲティスバーグでのリンカーンの演説が話題になっていて(リンカーンの演説は短かったとだけ紹介されていたのが面白かった)、そういう奴隷制度廃止への流れの中で、比較的リベラルな空気の家庭で育ったことがうかがえる。ただ、その中でも突出した思想を持ってしまった彼女は、周囲の人々とも考え方が合わないことが多く、しばしば辛辣で皮肉たっぷりの言葉を投げつけ、周囲を傷つけてしまうことが多かった(なんか自分のことを言われてるみたい)。
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大きく価値観が変わろうとする時代の流れの中にあって、好きな人(妻帯者であったようだが)との結婚もかなわず、部屋にこもって自分の天職と感じた詩作にひたすら没頭するしかなかったのかもしれない。彼女に負けないくらいの毒舌家で親友のヴライリング・バッファムが、結局自分を殺して良家に嫁いだのと違って、あくまでも自分の理想とする考えを押し通そうとしたエミリーは、不器用な生き方しかできなかったのかもしれない。彼女の生涯については痛ましさばかりが目に付く映画であった。
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映画の中では彼女の詩20篇が紹介されているが、ストーリーと字幕を追う身としては、じっくり味わうことが出来るはずもなく、また時をあらためて彼女の詩も味わってみようと思ったことだよ。予告編の中でポール・サイモンも彼女の詩を称賛しているという言葉があって、少し調べてみた。S&Gの66年の名盤 "Parsley,Sage,Rosemary and Thyme" の中の "The Dangling Conversation" に "And you read your Emily Dickinson, And I my Robert Frost" という一節があり、ポールが彼女の詩集を愛読していたことがうかがえる。また、"For Emily, Whenever I May Find Her"(邦題:「エミリー、エミリー」)は彼女のことを歌っているのかな、と思ったが、直接的には語られてはいない。あるいは彼女の詩作に啓発されて作った詩なのかもしれない。
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少々脱線してしまったが、彼女の心の中あるいは詩作の内容と実際の生活ぶりとに乖離があるので映像化するのは難しかったのだろうと思われる。私のような貧弱な英語力だとやはり吹き替え版の方がよかったのかな、と思ったことだ。

対訳 ディキンソン詩集―アメリカ詩人選〈3〉 (岩波文庫)


Parsley Sage Rosemary and Thyme


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