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映画『マイルス・デイヴィス 空白の5年間』@神戸シネリーブル [映画]

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年末から公開されているのを知っていたが、なかなか兵庫までは来なかった。大阪のシネリーブルではやっていたので、いつか神戸にも来ると思っていたら、案の定やってきて、西宮のTOHOシネマズ でもやっていた。ただすぐに一日2上映になったので、なくなると思って急いで観に行った。
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マイルス・デイヴィスについてそう多く知っているわけではなかった。その生涯の中でクール・ジャズ、ハード・バップ、モード・ジャズ、エレクトリック・ジャズ、フュージョンなど多様な音楽性の変遷があって、たぶんモード・ジャズと言われる時期以降のものを聴いたとき、よく理解できなかったなあという記憶がある。自分的にはよりエモーショナルなジョン・コルトレーンやレッド・ガーランドあたりが好きだったのだが、彼らを「発見」したのがマイルスで、50年代に一緒に演奏していたと知って驚いた。

また、古くからのブルーグラス仲間のH君が、自分のバンドの名前にマイルスの名盤 "Kind of Blue (1959)" や "Bitches Brew (1969)" をつけているので、そこまで彼を魅了しているマイルスとは、というのがずっと頭の隅にあった。今回観るにあたってなにより興味があったのは、それまで怒涛のように新しい音楽を生み出していたマイルスが、70年代後半の5年間、ミュージックシーンから完全に姿を消したのは何故か、そしてその後復活出来たのは何故か、ということであった。
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物語は70年代の終わり、音楽活動をやめて引きこもっているマイルスの元に、ミュージックマガジンの記者と名乗る男がインタビューを申し込んでくるところから始まる。彼はマイルスを復活させようとしているのか、未発表の音源テープを手に入れたいだけなのかよく分からない、怪しい人物なのであるが、彼との2日間のやり取りの中で、マイルスの過去がフラッシュバックのように現れては消える。酒とドラッグと女に溺れながら新しい音楽を生み出してきた彼であるが、この映画では、多くの女性たちの中で、ミュージカルダンサーのフランシス・テイラーとの関係に絞って描写されていた。たぶん "Someday My Prince Will Come』(61)" のジャケット写真が彼女だと思われる。
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Miles Davis: Someday My Prince Will Come
https://www.youtube.com/watch?v=fBq87dbKyHQ
他にも女性はたくさんいるようなので、フィクションが混じっているのだろうが、彼女を傍に置いておきたいがためにダンサーを辞めさせるが、彼自身は奔放な生活を送っている。そんな彼の元を彼女はやがて去っていき、マイルスは深く傷つく。忘れようとしてますます酒とドラッグに溺れ、股関節の傷も悪化して、泥沼に沈み込んでいく…。
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そんな彼が再び「自分の音」を発見し、音楽活動を再開していくきっかけは、ややぼんやりしていて良くは分からなかった。フランシスへの思いが吹っ切れたのか、あるいは盗まれたテープの奪還劇の中で出会った新しい才能によるインスパイアなのか。そこには天才ならではの深い何かが介在していたのかもしれない。
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この映画の原題は "MILES AHEAD" といい、57年のアルバム名でもあるのだが、「マイルスは常に前に向かって進んでいる」という意味にも「自分の音を発見するには何マイルもかかる」という意味にもとれる。こんどH君に出会ったら、この映画の感想を是非聞いてみたいと思ったことだよ。

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