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映画『パリタクシー』@kino cinema 神戸国際 [映画]

映画『パリタクシー』@kino cinema 神戸国際
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原題:Une belle course(美しき旅路)2022年フランス製作
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なかなか良いフランス映画、と紹介されていたので観に行くことにした。「免停寸前のタクシー運転手と92歳のマダムのパリ横断旅を描いたヒューマンドラマ」とあったが、パリの街をぐるぐるタクシーで廻っているうちに、様々な事件に巻き込まれていく、というような展開なのかな、と思いながら観たのだが、事前にレビューなど読まなくてよかったと思ったのだった。それくらいよくできた映画だったが、事前に構成を知っているとネタバレになって、感動は3割減になるようにも思われるので、この稿を読んで行ってみようと思われた方は、是非予断を排して観ていただきたいと思う。
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ここでやめるわけにもいかないので、あらすじの一部を紹介しておく。「タクシー運転手として働くシャルルは、金なし・休みなし・免停寸前という人生最大の危機を迎えていた。そんなある日、タクシーに乗せた客マドレーヌから、寄り道しながらパリを横断してほしいと依頼が…。」
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客となった女性マドレーヌは92歳の女性で、これからパリの街の反対側にある養老院に入るという。演じているのはシャンソン歌手のリーヌ・ルノーという方で、実年齢もほぼ同じだが、凛とした気品のある方だった。こんな風に歳をとりたいものだと思った。
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あまり気の進まない仕事だが、金のために引き受けた運転手のシャルルを演じるのはコメディアンのダニー・ブーン。初めはふてくされがちだった彼が、この奇妙な"One Day Trip"の中で次第に変化していく様を見事に演じていた。

二人が立ち寄ったパリの街の場所々々は、彼女の人生にとって特別な意味のある場所だった。そこで語られたのは、戦後間もなくからベトナム戦争の時期までを、時代と闘いながら生き抜いた一人のフランス女性の壮絶な人生だった。
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二人が車で巡ったパリの街の風景はどれも美しかった。これだけでもこの映画を観る価値はあると思われた。この街で生きた彼女の人生は美しかったと言えるだろうか、それとも…。映画の中の節々で印象的に流れていたのはJazzの名曲たちだった。なぜフランス映画でジャズが?とも思ったが、ステファン・グラッペリやジャンゴ・ラインハルトらが、戦後のパリで活躍していたことに思いが及び、何となく腑に落ちた気がした。

サントラではないが3曲ほどyoutubeからあげておく。
Etta James - At Last ようやく私に愛が訪れた…
https://www.youtube.com/watch?v=S-cbOl96RFM
This Bitter Earth - Dinah Washington このほろ苦い地球で、愛はなんのためにあるの…
https://www.youtube.com/watch?v=BmEhO1OiEkY
On The Sunny Side of the Street - Dinah Washington 悩み事は玄関に置いて…
https://www.youtube.com/watch?v=1aG-wt983kc

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彼女が人生を終えるにあたって「すべてが一瞬の夢のよう」と語っていた。ふと中島敦の『山月記』の中の「理由も分からずに押し付けられたものをおとなしく受け取って、理由も分からずに生きてゆくのが、我々生き物のさだめだ。」という言葉が頭をよぎった。そして芥川龍之介の『黄粱夢』という小説のことも。この小説は古代中国の故事成語「邯鄲の枕」から作られた作品で、盧生という青年が、夢で自分の波乱万丈の人生を見るのだが、目が覚めてみると、眠る前に炊き始めていた黍の鍋もまだ煮え切らないほどの時間だった…。

二作続けて終活的映画を観てしまったことだよ。

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