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演劇『頭痛肩こり樋口一葉』@新歌舞伎座 [演劇]

演劇『頭痛肩こり樋口一葉』@新歌舞伎座
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3年ぶりの新歌舞伎座。
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もう20年前になるか、TVの劇場中継で偶々こまつ座の『泣き虫なまいき石川啄木』を観て感銘を受けた。他の作品も観たいと思いながら月日が流れて行った。今回観た『頭痛肩こり樋口一葉』は前述の作品の2年前の1984年が初演だったようで、こまつ座の旗揚げ公演だったということを今回知った。以来多くの名女優たちによって再演を重ねてきたようで、今回は主演の樋口夏子(一葉)役の貫地谷しほりをはじめとして、増子倭文江・熊谷真実・香寿たつき・瀬戸さおり・若村麻由美と錚々たる布陣である。
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物語は明治の女流作家の嚆矢である樋口一葉の19歳から亡くなる年までの毎年のお盆の16日の樋口家の様子を描きながら、一葉とその家族が時代の流れに翻弄される様を描いている。お盆は13日に迎え盆を行い、先祖の霊を迎え、14日と15日に家に滞在してもらい供養をして、その翌日の16日に先祖を送る、送り盆を行うのが通例である。
場面が始まる初めに、登場人物が少女の衣装に着替えて次のような盆歌を歌い踊る。遠目だからか初々しい少女たちに見えたのだったよ。
盆盆盆の16日に
地獄の地獄の蓋が開く
地獄の窯の蓋が開く
盆盆盆の16日に
地獄の亡者が出てござる
なんなん並んで出てござる
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井上ひさし氏が創った歌詞かなとも思ったがそうでもないらしい。お盆がこの世とあの世をつなぐ何かだとは思っていたが、「地獄の窯の蓋が開く」というのはなんとも不気味ではある。「科捜研」などで自分にはおなじみの若村麻由美さんが、成仏できないでいる幽霊を明るく美しく可憐に演じていらっしゃっていて、あの世も悪くないかもと思わせてくれた。
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「お盆になりました」という挨拶は自分にはなじみがあって、故郷の村では「盆になりまして」だったかな。毎年13日の日にその年初盆の家々を廻ってお参りしていた。以前は帰省時によくその役目を仰せつかっていたが、都会にずっと暮らしていると、だんだんそういう風習から遠ざかってしまっているなあ。
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一葉の家は農民だった両親が駆け落ちして江戸に出て働き、財を得て直参の株を買い、武家になるが、その後事業に失敗して借金を背負うようになる。一葉も兄の死によって当主となり、否応なく一家を背負わなくてはならなくなった。彼女が小説家を志したことの裏に、元直参の当主としての自恃のようなものが潜んでいたのかも知れないと思った。一葉の死後、重い荷物を一手に背負わなければならなくなった妹の邦子のラストシーンは痛ましかった。
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お芝居全体はユーモアとギャグに溢れ、喜劇の体をなしているが、その中に「世の中全体に張りめぐらされた因縁の糸の網」に絡みつかれ、江戸から明治への時代の濁流に翻弄されながら、女性としていかに生きるか、ともがき苦しんでいる様が写されていて、現代につながる素晴らしい演劇作品だと思ったことだ。願わくば劇場中継の形で、遠目でなく観たいものだとも思ったことだよ。

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