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映画『ロニートとエスティ彼女たちの選択』@シネ・リーブル神戸 [映画]

映画『ロニートとエスティ彼女たちの選択』(原題:Disobedience)
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ネットを見ていたら、朝の情報番組でおなじみだったが半年前にフリーになった女子アナのUさんが、この映画に感銘を受けたという記事を見たので、観てみようと思ったのだった。ミーハーな奴。シネ・リーブルにやっと来たと思ったら朝10時と夕方5時半の2回しか上映していない。そこで雨の日曜日に行くことにした。行ってみると4階の大きなホールでの上映だったが、10人ぐらいしかお客さんはいなかった。人気があるから大きなホールというわけでもなさそうで、意味不明だ。
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『ナチュラルウーマン』で第90回アカデミー外国語映画賞を受賞したチリのセバスティアン・レリオ監督がメガホンをとっているとのことだが、寡聞にして知らなかった。主演女優の一人レイチェル・ワイズが製作に入っているようなので、どうも彼女がこの監督に惚れ込んでこの映画を撮ろうとしたのではないかと思われた。もう一人の主演女優レイチェル・マクアダムズもアカデミー級の女優のようだが、初めて知った名前だった。どちらの映画もトランスジェンダーがテーマになっている点では共通している。
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原作はイギリスの作家ナオミ・オルダーマン(Naomi Alderman)が2006年に書いた自伝的小説 "Disobedience"(不服従)だということだ。映画を観ていて時代がいまいち分からなかったが、彼女は74年生まれなので、現代が舞台なのだろう。ロンドン郊外のユダヤ教コミュニティの小さな街という設定なので、周囲から少し離れた環境なのかもしれない。ちょっと不思議な街のような印象を受けた。そこが閉鎖的な社会であることを暗示しているのかもしれない。
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物語はユダヤ教の指導者ラビを父に持つロニート(レイチェル・ワイズ)が、父の死の報を受けて住んでいたニューヨークから故郷の街に帰ってきたところから始まる。ロニートは若い頃幼馴染のエスティ(レイチェル・マクアダムズ)と恋仲になってしまうが、父親や厳格な戒律を持つユダヤ教社会はそれを許さず、ロニートは故郷を飛び出してニューヨークで写真家になっていた。久しぶりに再会したエスティは教師になっていて、驚いたことに同じ幼馴染でラビの後継者にならんとしているドヴィッドと結婚していたのだった。それを知ったロニートは、一度はすぐにでもニューヨークに帰ろうとするのだが…。
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原題の「不服従」という言葉はややきつい印象も受けるが、寛容でない社会に囲まれて生きていくとき、それに抗うにはよほど強い意志を持たねばならないだろうと考えると、決してそうではないのかもしれない。一口にトランス・ジェンダーといっても様々な形があり、軽々に理解したような顔をして語ることもできない気がする。ここ数年そのようなテーマ・モチーフで描かれた映画やドラマをいくつか観たが、それらはどれも固定的な価値観が生む偏見と闘うことの一つ一つの例であるのだと思って、自分に引き寄せて観るべきなんだろうと改めて思った。
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最初の場面だったので見落としそうになったが、父のラビが教会で倒れるときに、「あらゆる生き物の中で人間だけが、自分の意志によって自由に選択をすることが出来る動物だ」と説いた言葉を思い出した。かつてユダヤ教のコミュニティから娘を追放した父が、自らの死を前にして娘への赦しともとれる言葉を吐いたことに、何か救いのようなものを感じた。
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一見様々な社会の軛(くびき)から解放されて、少しは自在に生きられるようになったのかな、とも思える今の自分であるが、なかなかどうして、人間は死ぬまで「社会的動物」であり続けるしかないのだろうなとも思う。若い頃読んだ詩の一節がふと頭に浮かんだ。
「不服従こそは少年の日の記憶を解放する」(『少年期』)


レイチェル・ワイズ×レイチェル・マクアダムス主演!映画『ロニートとエスティ 彼女たちの選択』予告編
https://www.youtube.com/watch?v=qwnNtmQNiDc



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