SSブログ

舞台『正しいオトナたち』@芸術文化センター阪急中ホール(西宮) [演劇]

舞台『正しいオトナたち』
001.jpg
真矢ミキ主演の四人劇だということで行ってきた。他にも近藤芳正・中嶋朋子・岡本健一という名だたる演技派の俳優たちが出るというのも楽しみだった。こういう演劇を地方都市のホールで観ることが出来るのはある意味すごいことなのかもしれない。蛇足だが奇しくも去年の同じころ(8日だったか)に同じホールで演劇(『セールスマンの死』)を観た後のトイレで膀胱の疾患を発見したのだった。なぜかその時見た芝居については書いていない。動揺していたのかな。

閑話休題、この『正しいオトナたち』というお芝居は、ヤスミナ・レザというフランスの劇作家が2007年に発表した戯曲『大人は、かく戦えり』をもとにしたものらしい。ちなみにこの作品は2011年にフランス・ドイツ・ポーランド・スペイン合作で映画化されている(邦題は『おとなのけんか』)。戯曲の方はローレンス・オリヴィエ賞、トニー賞など、世界的な演劇賞を総ナメにしたらしい。
002.jpg
舞台はウリエ家の居間での、数時間のやり取りがリアルタイムで展開されるという、ある意味地味な展開のものである。役者の演技力に負うところの大きい作品だ。ウリエ夫妻の家に、ウリエ家の息子を棒で殴って怪我をさせた相手の両親(レイユ夫妻)が尋ねてきた場面から始まる。ウリエ家の妻ヴェロニック(真矢)と夫のミシェル(近藤)は寛大さを装いつつ、怪我をさせた相手の息子の非を指摘し、暗に謝罪を求める…。

それぞれが公正で進歩的な考えであると自認している親たちは、冷静に事態を収めようとするのだが、話し合いは次第にほころび出しエスカレートしていって、それぞれの本音をさらけ出していく。きっかけは些細なことで、弁護士であるレイユ家の夫アラン(岡本)の携帯に訴訟に関する電話が次々にかかり、あたりかまわずぞんざいに対応する夫に妻アネット(中嶋)の不満が爆発して、それはウリエ夫妻にも伝染して事態はとんでもないことになっていく…。
004.jpg
見始めた時の感想は、これはやはりフランスを舞台にしたものなので、日本ではそもそもの始まりが違うなというものだった。日本では怪我をさせられた方の親が子供を連れて相手の家に怒鳴り込むか、逆に怪我をさせた側が謝りに行くというのが多くのパターンかなと思えるからだ。日本では今でもパブリックな人間関係というものがやや希薄であるような気がする。尤も、最近のモンスター・ペアレンツなどは、またまた異様な関係を作っているのかもしれないが。

そういう民度の違いはあるが、普段は公正さを装っている大人たちが、一皮むけばむき出しの自我や敵意を内に持っていて、些細なことから露呈する…、という構図は洋の東西を問わず同じなのかな、とも思った。「正しい大人」であろうとしていることがいかに付け焼刃に過ぎないかもしれない、ということに警鐘を鳴らしている作品と言えるかもしれない、とわが身を振り返ったのであったよ(笑)。
003.jpg
それぞれの役者さんの演技は素晴らしく、真矢さんは天真爛漫に素を出していると感じたし、近藤・岡本の男性陣もキャリアに裏付けられた老獪な演技だった。特にアネット役の中嶋さんはTVで見るより(失礼)ずっとスタイリッシュで美しく、その彼女が酔っ払ってグチャグチャになっていくくだりは、この劇のハイライトではないかと思ったことだよ。

舞台『正しいオトナたち』スペシャルPV
https://www.youtube.com/watch?v=-ZxD3nIg83c

映画『おとなのけんか』(原題:CARNAGE)
005.jpg
nice!(2)  コメント(0) 
共通テーマ:演劇

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。