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演劇『A列車に乗っていこう』&「元町ジャム会」@兵庫県立芸術文化センター(西宮)& James Blues Land(神戸元町) [演劇]

演劇『A列車に乗っていこう』
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「いつまでもたおやかな女優・石田ひかりと新世代女優の松風理咲の二人芝居」ということで観に行った。題名がジャズの "TAKE THE A-TRAIN" から来ているのだろうというのもあったかな。実際エンディングテーマに件の曲が流れたのだが、曲の内容とそれほど関係があったようには思えなかった。曲から受ける感じが「行き先なしの汽車」のイメージだからかな。小説などでも有名なポップやロックの曲名を題名にしているのを時折見かけるが、読者の興味を引くためだけのものも多いような気がする。
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登場人物は二人だけで、難病を患っていたらしい少女そら(松風理咲)と、少女の看護師でもあり個人教師でもある時枝(石田ひかり)は、ある日病院を出て二人だけで列車に乗ってどこかへ向かう。設定も詳しくはわからないまま観ているのだが、少女は初めて病院を出て外の世界を見たのではないかと思われた。少女は初めて見た現実の街の遠くに高い塔があるのを見て時枝に尋ねるのだが…。
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二人の乗った列車は様々な土地を通り過ぎ、そこで見た様々な景色について時枝に質問し、時枝はやさしくそれに答える。この世の様々な事象の意味について、アリストテレスに始まってデカルトやカント、儒教や般若心経、果ては宮沢賢治まで持ち出して説明する。わかりやすい言葉で説明するのだが、テーマが次々と展開するので、理解する前に次の場面に移ってしまうので、ちょっとついていくのが大変だった(笑)。二人芝居だからということもあるだろうが、膨大なセリフを覚えなければならない二人の女優さんは大変だったろうと思った。

もうすぐ50台にならんとしている石田さんだが、その透明感のある美しさは健在だった。姉のゆり子さんを美魔女と呼ぶなら、ひかりさんは「永遠の美少女」と呼びたい気がした。一方、現役美少女の松風さんも透明な美しさと可憐さを持ち、とても病人とは見えない感じもややあったが、お二人の醸し出す穏やかで幻想的な雰囲気が、ともすれば理屈が勝って観念的なやり取りになってしまいそうなお芝居をやさしく柔らかく進行させていたように思われた。

私たちがこの世で生きているということには限りがあり、「生まれて」「生きて」「死ぬ」だけだということは自明のことなのに、そのことをどう受け止めたらいいのか、と苦しみ思い悩みながら日々を送っている。時に哲学者の言葉や宗教的な啓示に縋りながら。二人の列車の旅はそういう私たちの人生の歩み方をなぞっているようにも見えた。再び街に戻った二人だが、少女は初めに街の向こうに見えた「塔」の正体を見ようと歩きだしていく…。「塔」とはいったい何なんだろうか。ふと太宰の小説の中の一節を思い起こした。

「われ、山に向かいて目を挙ぐ――詩篇、第百二十一」。『桜桃』の冒頭に掲げられたこの句は、私の中で折に触れて反芻される詩句であるが、劇中の「塔」もそれに似た何かかなあとぼんやり思いながらホールを出た。この劇は北村想さんの書下ろしのようだが、是非そのシナリオをちゃんと読んでみたいと思ったことだよ。

「元町ジャム会」
さて、この日は元町でブルーグラスのジャム会がバッティングしていたが、遅ればせながら駆け付けた。お店に入ったのは5時半過ぎで、参加者もやや少なくなっていたが、残られていたレジェンドたちにサポートしていただいて、気持ちよく演奏することができました。ご一緒していただいた皆さんありがとうございました。
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