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映画『すずめの戸締まり』@OSシネマズ神戸ハーバーランド [映画]

映画『すずめの戸締まり』
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新海誠監督のアニメを観るのは3回目である。今回は東日本大震災を取り上げていて、その描写に賛否両論が出ているというのもちらっと聞いていたので、どのような描かれ方をしているのか、という興味もあった。実際に観てみると、確かにこれまで震災を取り上げたニュースやドキュメンタリー番組で出ていた震災後の情景も描かれていたが、同時に日本の他の地方における<災い>の予兆も描かれていて、阪神淡路大震災を体験した自分にとってもそれほどきつい感じは受けなかった。実際に家族を失った方々にはもっと違う受け止めがあるのだろうとも思われるが。

2016年の『君の名は。』は、男女の身体が入れ替わるという「とりかへばや物語」だったが、同時に彗星の破片の落ちた町を時空を超えて救う、というお話でもあった。「糸の結びは、時間を超えて繋がる」という言葉がこの物語のリアリティを支えていたと思われた。
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2019年の『天気の子』は、異常気象による長期間にわたる雨で東京が水没するというお話で、祈ることで短時間、局地的だが確実に雲の晴れ間を作る能力を持った少女が描かれていた。
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いずれも地球の長い歴史の中で起こり得る様々な災いと、かなわぬながらそれと闘いながら生きている人間、という視点があったように思われた。今回はどうかとみると、太古からこの列島に繰り返し襲っている大地震を、地中に封じ込められている「ミミズ」が地表に現れて暴れるという設定で描かれていた。
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物語は、宮崎県の海辺の町で叔母の環と2人で暮らす17歳の女子高校生岩戸 鈴芽が、扉を探しているという旅の青年・宗像草太(閉じ師)と出会うところから始まる。彼のことが気になって山の中にある廃墟に入って行った鈴芽は、一つの扉を見つけて開けてしまう。そこはこの世と異世界(常世)の境にある扉で、鈴芽はそこに挿してあった要石(かなめいし)を抜いてしまい、地中に封じ込められていた「ミミズ」が姿を表し、この世に災厄をもたらそうとする。地震を起こすのは地中のナマズが暴れるからだ、と昔は言われていたようだが、そこから発想された怪物なのかなと思われる。
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ダイジン(要石から開放された)によって鈴芽が持っていた三脚の椅子の中に閉じ込められた宗像と一緒に日本各地の廃墟を訪れ、「扉」を閉めて回るのだが、旅はやがて鈴芽がかつて被災し、母を失った東北の地に向かうことになる…。
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ここに至って、ミミズとの闘いの旅は、震災で母を失った喪失感の中で生きていた鈴芽と、姉から鈴芽を託され、その重圧と闘いながら育ててきた環の再生の物語となっていく。

閉じ師は陰陽師を連想させるし、要石や常世や宗像の唱える祝詞のような呪文は日本古来の神道に似た何かを感じさせる。総じて今回の作品はより宗教的な色が強まっているような気がするが、人は目の前に死が迫っているかもしれない時でも、持てる生を精一杯生きて行くべきなのだという考えは、既存のどの宗教よりも実存的といえるのかな、と思ったことだ。今回も実写以上に美しい風景描写が素晴らしかった。美しい山河に包まれて今生きていることの貴重さを思ったことだ。


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