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映画『ラーゲリより愛を込めて』@OSシネマズ神戸ハーバーランド [映画]

映画『ラーゲリより愛を込めて』
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シベリアの強制収容所(ラーゲリ)に抑留された、実在の日本人捕虜・山本幡男を描いたこの映画は、2年前ぐらいから話題になっていたが、ようやく上映されることになったので観ることができた。主人公の山本さんは、私の故郷隠岐の島の西の島の出身だったということにも興味を惹かれたが、義父がやはりシベリア抑留者だったし、叔父一家も満州から命からがら帰国したということも、ずっと心の中にこびりついていたというのもあった。
どちらも生前にもっとお話を聞いていたらという、悔いのようなものもあったので、実話を元にしたこの映画を観て、少しでも当時のことに思いを馳せたいと思ったのだった。

原作は辺見じゅんのノンフィクション小説「収容所(ラーゲリ)から来た遺書」である。実話を元にして作られた映画とはいえ、フィクションも入っていると思われるので、後で読んでみようと思っている。
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物語は1945年の中国・大連から始まる。満鉄のハルビン特務機関で働いていた 幡男(二宮和也)は妻モジミ(北川景子)と4人の子供たちと穏やかに暮らしていた(後で調べたらモジミさんは私の故郷の五箇村の出身と知って二度びっくり)。日本が降伏し、ソ連が侵攻する前夜、必ずまた逢えると約束して妻子を日本に帰らせ、自分は大連に残ったが、ソ連軍に拘束され、それからの長い抑留生活が始まるのだった…。
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満州からの帰国がどれだけ大変だったかということは、叔父からも少し漏れ聞いていたので、そのことを重ねながら観ていた。夫のいない中4人の子供を連れての帰国は過酷な体験だっただろうと推察された。「もはや戦後ではない」と言われる時期に生まれ育った自分には遠い昔の物語としか当時受け止められていなかったが、映像化されたものを見ると、収容所の劣悪な環境(極寒の中での過酷な労働・劣悪な食事etc.)が生々しく伝わってきた。
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他の抑留者たちが絶望のあまり命を断とうとしたり、脱走しようとしたりする中、彼は希望をもって生き延びようとする。家族と無事再会することが「希望」だとも思われたが、どうもそれだけではないようにも思える。抑留仲間の中には家族を亡くしたり、自らの変節を恥じて自暴自棄になっている者もいたが、 幡男の励ましや生きる姿勢に感化され、考えを変えていく。絶望の中でも人はなぜ生きるのか、という問いかけがここにはあるように思われた。
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話は変わるが、幡男は「俳句のみならず、山本は日本の古典、落語、さらにはカントやヘーゲルといったドイツの哲学者について語るなどの博識さで、一同を楽しませた」とある(wiki)。彼だけが特別な記憶力を持っていたということなのかもしれないが、当時の人たちが、学んだことを記憶にとどめておこうという努力のすさまじさが感じられた。翻って現代に生きる自分たちが、おびただしい情報を束の間頭に入れては忘れていっていることは果たして正しいことなのだろうか、と考えてしまった。

実際に映画を観るなり原作を読んでいただく方がより感銘が深まると思われるのでここでやめておく。遺書のことについてもネタバルになるので。

最後に一つ。どんなに素晴らしい思想でも、生きていることの手触りのようなものから乖離してしまったら、単なる誇大妄想でしかなくなる、ということを、現在ウクライナに対して侵攻を行っているロシアの独裁者に対して思わずにはいられない。いい映画を見せてもらった。
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