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映画『コーダあいのうた』@109シネマズHAT神戸 [映画]

『コーダあいのうた』(原題:CODA)アメリカ・フランス・カナダ合作。
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家族の中でただ1人の健聴者である少女が、素晴らしい歌の才能を持っていることを見出され、夢に向かって格闘するドラマ、ということで観に行った。2014年のフランス映画『エール!(英語版)』の英語リメイクであるらしい。実話をもとにしているかどうかは不明だが、リメイクするに値する映画だということなのだろう。原題の "CODA" は音楽用語なのかな、と思っていたが、「Children of Deaf Adults(耳の聴こえない両親に育てられた子ども)」の意だということを初めて知った。TVの会見等や講演会などで、傍らで手話で内容を伝えているのは目にしていたが、耳の不自由な方が少なくないんだなあ、ぐらいの認識しかなかった。

この映画は、2014年のフランス映画『エール!(英語版)』の英語リメイクであるとのことで、なぜ再び作られたのかという事情はよく分からないが、いい映画だったからということは間違いないことだろう。素晴らしい作品でも、時がたつと忘れ去られてしまうというのは、めまぐるしく新たな情報が通り過ぎていく現代社会の常なので、一定期間をおいて再び世に問いかけるというのは意味があることなのかもしれない。
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物語の舞台は明示されていないが、ロケ地がマサチューセッツ州グロスターだったようなので、そこの港町とイメージして構わないだろう。映画の中でバークリー音楽大学の入学試験に車で向かうという場面もあったし。その街で漁師をして暮らしている一家があって、両親と兄が聾者である中で、一人だけ健聴者である少女ルビー(エミリア・ジョーンズ)が物語の主人公である。幼いころから家族の手伝いをして、漁や獲れた魚を市場に卸す作業をしていた。その一方で、CODAとして家族の中では手話を使っていたため、会話に不慣れな所もあり、級友からは好奇と嘲りの目で見られ、内向的になっていた。
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そんな中で、学校の合唱部に入部したことが、彼女の何かを変えていく。顧問の先生がルビーの歌の才能に気付き、特別指導をしていく中で、バークリーへの進学を勧める。希望を抱くルビーだが、そうなると家業を助けることが出来なくなってしまう。家族はどのように反応したのか、そしてルビーはどう決断するのか…。何か最近よく観ているBSの『英雄たちの選択』風になってしまったが、これ以上はネタバレになるので。

母親ジャッキー役のマーリー・マトリンも父親フランク役のトロイ・コッツァーも聴覚障害を持つ俳優だという。彼らが演じる家族は、野放図なくらい明るく奔放で、我々の持っているかもしれない先入観を見事に壊してくれていた。映画だからかも知れないけど。ルビーは本来持っている明るさの外側に、周囲に対する心の殻を被っているデリケートな心情を巧みに表現していた。最初はおずおずと歌っていた彼女が、次第に殻を破って伸びやかな歌声に変わっていくのが興味深かった。
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合唱部の発表会の場面で、突然すべての音が30秒ほど消えた時があった。ああ、これがルビーの家族が観ているコンサートの情景なんだと思った。終わりの方の場面で、ルビーがジョニ・ミッチェルの"Both Sides Now" を歌っている時、突然手話を交えて歌い出したのだが、ルビーの中で何かが変わっていった瞬間だったのだと思う。いつも思うのだが、よく知っている歌が映画の中で使われると、全く別の輝きを持つことに驚く。いい歌、いい映画を見せてもらった。
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マーリー・マトリンのインタビューの一部を最後に紹介しておく。
「この映画を見た人に、この映画に登場するような、耳の聞こえない親を持つ子供が実際に存在するということを知ってもらいたい。私たちの生活に手話というコミュニケーション手段が欠かせないのだということも。それに、同じような物語は山ほどあります。毎日のように起きています。こういった物語を伝えていく必要があります。この物語を皆と共有できる機会を持てて、とても嬉しい」
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CODA I Both Sides Now - Emilia Jones I Music Video


<参考>
映画とは直接関係ないが、CODAについて興味深い記事があったのでリンクを貼っておく。
「耳の聴こえない親に育てられた、聴こえる子どもたち『コーダ』は何を抱え、何に苦しんでいるのか」(五十嵐 大)
https://bunshun.jp/articles/-/38612

青春の光と影[私の好きな20世紀の唄たち]vol.17
https://hobot2.blog.ss-blog.jp/2015-04-20



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