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演劇『Sing a Song』@兵庫県立芸術文化センター(西宮北口) [演劇]

演劇『Sing a Song』@兵庫県立芸術文化センター(西宮北口)
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兵庫県立芸術文化センターでの演劇は去年の秋に『チック』を観て以来だ。
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今回も平日の午後の公演だった。事前の知識としては太平洋戦争中の軍の慰問の話で、戸田恵子と大和田獏が出演するということぐらいだった。座席は2階の前から2列目で少し遠かったが上から全体を見渡せるのはよかった。客席は前の『チック』と違ってほぼ満席だった。主演陣がベテランのせいか、プロモートの違いなのか。後で調べるとほぼ一ヶ月にわたって全国のあちこちを巡演しているらしい。力の入れ方もなかなかのもののようだ。

戸田恵子演じる三上あい子という歌手と彼女の才能にほれ込んでいるマネジャー(大和田獏)たちが軍の要請で南方の日本軍の慰問に出かけるという話である。あい子のモデルになっている歌手は、かの「ブルースの女王」と言われた淡谷のり子である。
1930年頃の写真。
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別れのブルース 淡谷のり子
https://www.youtube.com/watch?v=MPn6zyoW-W8
彼女の戦時中のエピソードについては少し聞いたことがあったが、改めて調べてみると「戦時中、軍歌を拒み、モンペ姿も拒絶して華やかなドレス姿で慰問に赴き、禁止されてもブルースで兵士を励ました。」とある(wiki)。舞台の方もほぼ同じコンセプトで進行していた。
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それにしてもたった6人の出演で、場面は憲兵の部屋・南方の島の日本軍基地の部屋・鹿児島の基地(たぶん知覧の特攻隊基地)・慰問のステージなどしかないが、その中でのやり取りや服装でそれぞれの空間の外の情景を浮かび上がらせるのはすごいことだと思った。これが演劇の力なのだろうな。また、主人公あい子(戸田)の歌が素晴らしかった。公演に向けて淡谷のり子の歌も相当研究したと思われるのだが、元々歌も上手い人だったのだと後で調べて分かった。「別れのブルース」や「雨のブルース」などの淡谷のレパートリーもそれ以外の歌も素晴らしかった。
劇とは関係ないが彼女の歌をyoutubeで。
眠れない夜の窓辺で/戸田恵子
https://www.youtube.com/watch?v=8dVxLA9k8H4
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今、朝ドラの「わろてんか」でもお笑い軍団の戦地慰問が取り上げられているが、淡谷の反骨ぶりはその比ではないようだった。始末書の厚さが数センチになるほどの検閲の嵐を乗り越えられたのは、彼女の歌に対する強い信念もあったのだろうが、何よりも戦地の兵隊さんたちの「本当の歌」を求める声が強かったからではないか。時勢に迎合する歌でなく本物の歌を求める声に応えて、自分が本当にいいものだと信じる歌を歌い続ける。ささやかながら人前で歌っている自分も、その姿勢を少しでも見習いたいと思ったことだよ。

もう70年以上前の出来事が描かれているのだが、近頃のわが国の情勢を見ていると対岸の火事とはとても思えない。メディアへの規制や情報操作など表現の自由を侵しかねない状況がひたひたと押し寄せているように感じられる。今の私達も一人ひとりがこの息苦しい空気をはねつける強さを持ち続けなければならないと強く思った。年をとってもすごく美しい歌を歌い続けた淡谷さんのように…ね。



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