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映画『サバイバルファミリー』@OSシネマズ神戸ハーバーランド [映画]

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世間ではこの日(最終金曜日)は「プレミアム・フライデー」とかで、午後三時には仕事を終えて自分のために時間を使うということである。趣旨はまことに結構なことではあるが、一方で残業時間を60時間以内に抑えるということも実現できそうにない状態で、「プレミアム~」と叫んでも、多くの労働者諸君にはむなしく響くだけのような気もするが。事実4時に映画を観終わって帰途に就くとき、映画館は閑散としていた…。

この映画を観ようと思った理由の一つは、主役の一人が小日向文世であることだった。近くは大河の『真田丸』で、茶目っ気や天真爛漫さの裏に、狂気にも似た強い猜疑心や執着心を内包している新たな秀吉像を見事に演じていた。それ以前には、ドラマ『相棒』で、平凡な元予備校教師にして悪魔教の教祖を自認する殺人鬼である村木重雄役が強く印象に残っている。人間の心の奥底に潜むアンビバレントな感情を演じられる数少ない役者さんだな、と思って観ていた。調べるとそういう彼の資質を見出したのは、彼を映画『アウトレイジ』で起用した北野武だったとも書いてあった。またレンタルして観てみようと思う。

もう一つの理由は、現代の都会で生きている人々の生活から、ある日突然電気が奪われ、それに伴いガス・水道・通信機器などが使用できなくなって、サバイバル生活を強いられる、という映画の設定から、阪神・淡路大震災や東日本大震災を経験しながら、それを忘れつつあるかのように生活している私達への警鐘のようなものが含まれているのだろう、と想像されたからでもあった。観終わった初発の感想としては、コメディタッチで面白かったけど同時に疲労感も重くのしかかってくる映画だった。震災の頃の体験から自分の中でより切実さが強く感じられたからだろうか。

さて内容であるが(ここからはネタばれありかも)、都内ののマンションで暮らす鈴木家の四人家族が主人公たちである。企業戦士を自任する父(小日向文世)は家に帰るとテレビを見ながら晩酌をし、寝てしまう生活ぶり。いばり散らしているが家族はそれに取り合わないでいる。ヘッドホンで音楽に夢中の息子や、スマートフォン依存症気味の娘、そしてそんなバラバラな家族に不満を抱きながら日々の生活に追われている妻(深津絵里)も、すっかり都会暮らしに慣れて、故郷の鹿児島から送ってくる魚も捌けないありさまである。
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ある朝目覚めると、家中が停電してテレビや冷蔵庫などの電化製品が動かなくなっていた。さらに、家電だけでなくスマートフォンの電源も切れてしまっていて、家を出て駅に向かっていると、車も電車も、全て電気を使うものの一切が動かなくなっていた…。一週間の耐乏生活の後、ついに東京脱出を決意する。僅かな食糧を自転車に積み、ひたすら西を目指すのだが…。
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小日向演じる父は旅を通してリーダーシップを発揮しようと頑張るのだが、普段いばり散らしている割には危機対応能力もなく、次々とダメオヤジぶりを露呈してしまう。途中で出会った時任三郎・藤原紀香(役名は??)らの家族のスマートなサバイバルライフぶりとは対照的な無残さである。持っていたつまらないプライドが切り裂かれていく過程を小日向は実に見事に演じていたように思った。
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ある意味では震災のときより更に過酷な仮想の状況の中で、どうリアリティを感じさせることができるかがミソだろうと思われるが、部分的には「これはどうかな」と思う箇所もあったが、おおむねうまく作られていたように思われた。コメディ仕立てにしたのもリアリティのない部分を補うのに役立っているのかもしれない。
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いずれにしても電気やガスなどに過度に依存している私達の今の生活を振り返るのに十分な良質の作品だと思ったことだ。ケンタッキーの農場でアーミッシュの暮らしなどを参考にしながら生活している昔のバンド仲間のことを思い出したが、その彼女らにしてもネットや電化製品と完全に無縁ではいられないだろう。
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エンドロールで流れた、フォスターの "Hard Times Come Again No More"(SHANTI)が心にしみた。よく知っている曲がこんな風に映画とフィットしているので嬉しくなった。歌っているSHANTIさんは、あのゴダイゴのメンバーの娘さんだそうで、新しい才能が次々出てくるなあと感じたことであったよ。
映画「サバイバルファミリー」主題歌『Hard Times Come Again No More 』 / SHANTI
https://www.youtube.com/watch?v=cagrWg_qMWI
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