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THE BOXER [私の好きな20世紀の唄]vol.8 [20世紀の歌]

THE BOXER Paul Simon
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「ボクサー」は,S&Gとしての最後のアルバムとして出された『明日に架ける橋』のB面の1曲めの歌である。今CDで聞くとB面に裏返して針を下ろす時の,ときめきに似た感じがなくなってちょっと味気ない気がする。このアルバムは他にも「明日に……」や「コンドルは飛んでいく」など全曲が名曲というアルバムなのだが,特にこの曲は録音に何十時間もかけたというエピソードがあるくらい,彼らの思い入れがつまった曲なのだと思う。最初この美しい曲を聞いた時は,プロボクサーの歌かなと思っていたが,歌詞をよく見ると,田舎を飛び出した貧しい若者が都会の味気なく,貧しく,孤独な生活の中で,もがき苦しんでいることが描かれていて驚いた。都会で独りで生きるということは常に何かと闘い続けることであって,闘うことをやめた瞬間に彼は周りから繰り出されるパンチに打ちのめされ,存在を失ってしまう。当時高校から大学へと進み,更に見知らぬ街で独り生きていた私には,十分自己を重ねるに足る歌であった。特にリフレーンの Li la li...というコーラスのバックで鳴るドラムスの一撃が,まるで自分が殴りつけられているように響いて来たものである。

ポール・サイモンはS&G解散後もソロで多くのアルバムを出し,活躍を続けてきた。
その間グラミー賞も何度か受賞しているが,私にとってのポール・サイモンはやはり「サウンド・オブ・サイレンス(沈黙の音)」や「アイ・アム・ア・ロック(私は岩)」であり,S&Gのポールである。

youtubeはセントラルパークのリユニオンコンサートのもの
http://www.youtube.com/watch?v=qy1hXDOenOY
ショーン・コルヴィンとアリソン・クラウスのライブ版
https://www.youtube.com/watch?v=lNEq0NNH1AM

ボクサー (大意。原詩は検索してみてください)

僕はただの貧しい若者だ
めったに身の上話はしないけど
ポケットいっぱいのはっきりしない
嘘の口約束なんかで
僕の反抗精神はすり減っていったのさ 
全ての嘘や冗談っていっても
どうせ人は自分の聞きたいことを聞いて
他のことは聞かないものだけどね

                    
僕が故郷の家を飛び出してきた頃は
見知らぬ人に囲まれたほんの子供だった
変に静かな駅の中を怖がりながら走り
身をかがめて,粗末な服を着た奴らの住む
貧しい街を求めて行った そこには
そういう奴らが不思議と集まってくる   

職人並みの給料でいいからと
仕事を捜したけど見つからなかった
七番街の娼婦たちに誘惑されただけさ
本当のところ僕がひどく孤独だった時は
そこで少しは慰められたものだけど

歳月は僕の周りをうねるように過ぎ
僕のような人間でもその中で翻弄され
僕は以前より年をとって
未来よりはまだ若い 当たり前だね
変化に変化を重ねても
僕らがどっちみち変わりばえのしない
人間だってことはちっとも変じゃないんだ
変化を重ねても大して変わっちゃいない…

                    
冬服を広げながら ここから逃げ出して
たまらなく故郷に帰りたくなったんだ
ニューヨークの街の冬みたいに
身を切るような寒さのない故郷に…
僕を導き,故郷へ誘う


荒野に独り立つボクサー
彼の職業は戦士
彼が泣き叫ぶまで打ちのめしたり
切り刻んだりする敵のグラブの一撃を
彼は決して忘れない
怒りと恥辱の中で
「僕は逃げる,僕は逃げる」
と叫びながらも
彼はまだそこに踏みとどまっている



Bridge Over Troubled Water


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