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Gentle on My Mind[私の好きな20世紀の唄たち]vol.87 [20世紀の歌Ⅱ]

Gentle on My Mind
written by John Hartford
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バンジョーとフィドルを弾き、タップ・ダンサーでもあるジョン・ハートフォードが作ったこの曲を初めて聴いたのは、グレン・キャンベル盤だったかな。あるいは Newgrass と言われるバンドの嚆矢の一つだったThe Bluegrass Allianceのレコードだったかもしれない。発表時期を時系列的に並べると下のようになる。
1967 John Hartford"Earthwords & Music"
1967 Glen Campbell "Gentle on My Mind"
1970 The Bluegrass Alliance "Newgrass"

いずれにしても、作者ハートフォードの名を知ったのは、ずいぶん後になってからだと思う。Allianceのギタリストであるダン・クレアリーのクロスピッキングを一所懸命コピーしたのを懐かしく思い出す。人前で歌うことはほとんどなかったが、ここ数年ライブで歌うようになって、歌詞の正誤を検討したりしたので、この稿でも取り上げておこうと思ったのだった。
Glen Campbell
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The Bluegrass Alliance
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といっても、彼のことをそれほど知っているわけでもないので、ワーナーによるプロフィール紹介を引用しておく。
 1937年ニューヨークに生まれセントルイスで育つ。ラジオの「グランド・オール・オープリー」を聴くうちバンジョーとフィドルを弾くようになる。1965年居をカントリーのメッカ、ナッシュヴィルに移し翌年RCAと契約する。1968年ハートフォードが作り歌った「ジェントル・オン・マイ・マインド」がグレン・キャンベルにカヴァーされ大ヒット、同年のグラミー賞にノミネートされ、ハートフォードの名前は広く知れ渡った。バーズのカントリー・ロックの名盤誉れ高い『ロデオの恋人』の録音にも参加した。1971年ワーナー・ブラザーズに移籍、伝統的アメリカ音楽であるブルーグラスを発展的に昇華した「ニュー・グラス」ムーヴメントの中核として『エアロ・プレイン』、『モーニング・ビューグル』という2枚の傑作を残した。2011年死去。

それまであまり成功していなかったグレン・キャンベルが、この歌と「恋はフェニックス」のヒットでスターダムに登ったことについては以前少し書いた(恋はフェニックス)。一方ハートフォードの方は、多くのミュージシャン(Dean Martin, Aretha Franklin, Frank Sinatra, Andy Williams and Elvis Presley)によってこの曲がカヴァーされることによって経済的に潤い、「このことが僕に(音楽的)自由を与えてくれた」と言ったそうだが、その後の活動ぶりからそれが垣間見られるのは興味深い。

さて、曲の内容であるが、一緒に暮らしていた女性のもとを去って旅に出るという設定は、「恋はフェニックス」と似ているという符合は興味深い。これらの曲が書かれた60年代後半という時期を象徴する思想が、それまでの束縛やしがらみから逃れて<自由>を手に入れたいという思いに根差していたのだろうか。二人の暮らしに決して満足していないわけではなかったのに、全ての束縛から脱したいという気持ちが勝ってしまったのか。一方で彼が置いていくこれまでの暮らしには、抜きがたい愛着があることも詞の言葉の端々から伝わってくる。

彼が71年に発表したNewgrassの傑作と言われる"AEREO-PLAIN"というアルバムを以前聴いた時は、それほど斬新とは感じられなかった。そこにモダンでおしゃれなサウンドを期待していたからかな、と今になって思う。彼の創ろうとした音楽は、ルーツミュージックに根差しながら、それらの音楽の持っている縛りや決まりごとを排して、どこまでも心の赴くままに自在に演奏し、唄うことではなかったかと思う。死ぬまで"Rambling Hobo"であり続けた彼の音楽を、もう少し追いかけてみたいと思ったのだった。

youtubeは以下の4曲を。他にも沢山!!
Gentle On My Mind John Hartford
https://www.youtube.com/watch?v=7cSqJMKvnso
Gentle On My Mind Glen Campbell
https://www.youtube.com/watch?v=mfMnNqn-hKg
Gentle On My Mind - The Bluegrass Alliance
https://www.youtube.com/watch?v=qXXUU3IU1tk
Gentle On My Mind John Hartford,Glenn Campbell&Ricky Skaggs



ジェントル・オン・マイ・マインド(大意。原詩は検索してみてください。)

君の扉はいつも開いていて
君の道を自由に歩けると知っているから
僕は君の寝椅子の後ろに寝袋を
丸め隠したままにしてしまう
忘れ去られていた約束や絆や
手紙の干からびたインクの染みに
僕が縛られることはないとわかっていたんだ
君は僕の記憶の中の川沿いの
田舎道にいつもとどまっている
僕の心の中でいつも変わらず優しいままで

岩や、支柱にからんだ蔦にしがみつくことじゃない
一緒に歩く2人はお似合いと思ったからと
誰かが僕にかけた言葉のせいでもない
この世界は罵りもしない代わりに許そうともしないと
ただ知ることが僕を束縛するんだ
僕は線路沿いに歩いて気づく
君が僕の記憶の川のそばの
田舎道を歩いていることを
何時間でも僕の心の中でただ優しいままで

麦畑や物干しロープ
廃品置き場やハイウェイが僕たちの間に入り
振り返ったら僕がいなくなっていたと
他の娘が母親に泣きついていても
僕は黙って走るかもしれない
僕の頬に喜びの涙が跡を残すかもしれない
夏の太陽が僕を焼き、僕の視力を奪うかもしれない
そんな時でも僕には君が歩いている姿が見える
僕の心に穏やかに流れる川沿いのあの田舎道を

どこかの鉄道操車場で
ぐつぐつがたがた音を立てる大鍋から
スープをカップに入れる
僕の髭はざらざら、石炭を積み上げた山
汚い帽子を目深に下ろして顔を覆う
ブリキのカップを両手で包み
胸に君を抱き寄せるふりをして気づく
僕の記憶の川辺の田舎道で
君が手を振っていることを
僕の心の中でいつも微笑みながらいつも優しく


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