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映画『ノマドランド』OSシネマズミント神戸 [映画]

『ノマドランド』(原題: Nomadland)
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ノマド(nomad)の語源はフランス語で「遊牧民」や「放浪者」を意味するらしい。最近では「ノマドワーカー」といって「時間と場所にとらわれずに働く人、もしくはそういった働き方」としても使われているようだ。コロナ禍の中でリモートワークをする人々が増え、その結果田舎暮らしを楽しみながら、仕事はリモートでという暮らし方も出てきているようで、それはそれで新しいライフスタイルが生まれてきているということなのだろう。映画の中では車に寝泊まりしながら各地を放浪する人々のことを指しているようだった。かつて貨物列車に無賃乗車しながら各地を彷徨う人を"Hobo"と呼んだようだが、ノマドは現代のホーボーなのかもしれない。
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この映画は60歳を過ぎた主人公の女性が、オンボロの中古バンで各地を巡り、その土地々々で仕事をしながら暮らすロードムービーで、アメリカ中西部の自然の景色が美しいということで観ることにした。封切されて時間が経っていたので、どの映画館も一日一回の上映になっていて適当な時間帯がなく迷ったが、9:40開始のミントに行くことにした。朝一の三宮ならそれほど密になることもなく、終わったらさっさと帰ればいいと思ったのだった。席をとった時は空いているように見えたが、始まってみるとそこそこ(といっても知れているが)お客さんが入ってきたので少しびっくり。おまけに隣が空いている席を選んだのに、隣におっちゃんが座ってきて、マスクを耳に引っ掛けたままだったので、少しビビッて「マスクしてもらえますか」と思わず言ってしまった(笑)。
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原作はジェシカ・ブルーダーが2017年に発表したノンフィクション『ノマド: 漂流する高齢労働者たち』である。2008年のリーマンショック以来未曾有の経済危機が全世界を襲い、その余波はリタイア世代にも容赦なく押し寄せてきて、多くの高齢者が家を手放すことになった。彼らは自家用車で寝泊まりし、職を求めて全米を彷徨うことになった。「現代のノマド」の誕生である。映画の主人公ファーン(フランシス・マクドーマンド)もその一人であった。彼女はネバダ州のエンパイアで石膏採掘の会社の社宅で暮らしていたが、会社は不況で閉鎖され、街そのものがゴーストタウンと化す。夫を亡くし住む家も失ったファーンは古いバンに最低限の家財道具を詰め込み、日銭仕事を探しながら国中を放浪する旅を続けるが…。
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ノマド仲間のリンダ(実在のノマドらしい)やデヴィッド(デヴィッド・ストラザーン)との交流の中で彼女はノマドとしての生き方を学んでいく。印象的な言葉は、教師時代の教え子から「先生は今ホームレスなの?」と聞かれて、「私はハウスレスだけどホームレスじゃないわ」と答えたことだった。姉や家族のもとに帰ったデヴィッドから「一緒に住まないか」と誘われ断ったファーンの中には、開拓時代のアメリカ人の自由を希求する心=ノマド魂が醸成されてきていたのだろうか。もう一つは、息子を亡くしてノマドになり、ノマドとしての生き方を人々に教えているボブがファーンに語った、「ノマドの良さは、別れ際に『またどこかの路上で会おう』と言うところだ」という言葉だ。そこには生き死にを超えた人と人との絆というものを感じさせてくれる何かがあるように思われた。
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もちろんこの映画には、格差社会化している現代アメリカ社会の問題が色濃く投影されている。そしてそれは現代日本の社会にも忍び寄っている。戦後の高度成長期に生まれ育ってきた私たちの世代は、故郷を離れ都会で働き、他人同士が暮らす都会の中で小さな家族を守ってきた。そういった社会のありようは果たして正しかったのか、そしてこれからの社会はいったいどうあるべきなのか。ファーンのいうように「それぞれの心の中にホームがある」と考えるのがいいのか…。答えのない問いを次々と脳裏に思い浮かばせながら、そそくさと電車に乗ったのだった。日曜日の三宮はやはり怖いからね(笑)。

ファーンの旅したネバダの砂漠地帯の風景は素晴らしかった。前に旅したコロラドのボールダーに似た風景もあって何か懐かしかった。
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