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Long Black Veil[私の好きな20世紀の唄たち]vol.51 [20世紀の歌Ⅱ]

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Long Black Veil
written by Danny Dill and Marijohn Wilkin
originally recorded by Lefty Frizzell.

この歌は50年代から60年代に活躍したカントリー・シンガーのレフティ・フリッツェルが59年に発表したものがオリジナルのようである。私はジョーン・バエズやザ・バンド、そしてブルーグラスのC.G.で知ったが、この稿を書くにあたってあちらのwikiを見るとおびただしい数のカヴァーがあるのに驚いた。多くのミュージシャンに取り上げられるこの歌の魅力はいったいどこにあるのだろう。
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レフティについてよく知っているわけではないが、ブルーグラスでもいくつかの曲がとり上げられている。"She's Gone, Gone, Gone""Railroad Lady"などがそうだ。また、正調ホンキートンク・カントリーの担い手として前にとり上げたマール・ハガードも崇拝していて、レフティのNo.1ヒットである " Saginaw Michigan " の歌い方を模倣したというのは有名な話らしい。
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さて歌の内容であるが、事実を元にした Topical Song ではないだろうが、物語になっている歌=バラッドで、古いフォークソングには意外と多い、殺人の歌(Murder Ballad)という要素と、親友の妻と寝てしまったという不倫の要素が組み合わさった歌である。前者では ” Banks Of The Ohio " が有名だし、後者は親友に彼女を紹介したら奪われてしまったと歌う " Tennessee Waltz " がある。アメリカ南部の人々はこのような赤裸々な歌を好むのかな、と不思議な気もする。

訳詩を見ていただくと内容はほぼわかると思う。殺人罪の被疑者になり、アリバイを証明できなければ死刑になるとわかっているのに、そのためにはその時間帯に親友の妻と密会していたことを告白しなければならない。悩んだ男は黙秘して死刑を受け入れる道を選んだというのだが、ちょっと理解し難いようにも思える。自分なら全てを告白して親友を裏切ったという汚名を敢えて引き受ける方を選ぶような気がするし、そもそもそんなに親友を裏切ることが許されないなら、初めからしなければいいのにとも思う。死を賭して愛する女性の名誉を守ろうとしたという点が美しいと考えられたのだろうか。
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人という存在そのものがそういう矛盾に満ちたものであるということなのかもしれないし、罪を犯してもそのことを神にだけ告解し、墓場まで持っていくというクリスチャンのあり方のようなものが背景にあるのかもしれない。いずれにしても日本にはこのような歌はないような気がする。江戸時代の武士の世界ならこんな設定の話はあるかもだけど。いずれにしても文化の違いを強く感じる歌ではあるなあ。

最後になるが、この歌は死者である男の視点から歌われているという点でも極めて特異な歌だということもできるようだ。アメリカは歴史が浅い国なので、幽霊やゴーストなどの超常現象に惹かれる傾向が強いという話も聞いたことがあるがどうだろう。

youtubeはまずレフティのもの。挿絵が雰囲気を出している。
Lefty Frizzell.... Long Black Veil - 1959.wmv
https://www.youtube.com/watch?v=w7t1-Rftx2U
続いてJOAN BAEZ - THE LONG BLACK VEIL, Milano 2008
https://www.youtube.com/watch?v=r9kTSf20pP0
The Bandの初期のアルバムから, "Long Black Veil"
https://www.youtube.com/watch?v=YMwPd27sg_k
チーフタンズのLong Black Veil。歌の内容に沿った動画が。
https://www.youtube.com/watch?v=888TFXZ6Ko0
このブログを読んで下さったI沢氏がこの歌のアンサー・ソングをFBで紹介してくれたので引用しておく。アンサーというよりは密会の相手の女性の立場に立った歌詞に替えられているということではあるが。
My Long Black Veil - Marijohn Wilkin
https://www.youtube.com/watch?v=sICQszWNivY

Long Black Veil (大意。原詩は検索してみてください。)

今から10年前の肌寒く暗い夜のことだった
市庁舎の灯りの下で一人の男が殺された
現場を見た人たちは皆口々に
逃げた犯人は私によく似ていたと証言した

裁判官は言った「お前にアリバイはあるのか」と
「お前が別のところにいたと証明できたら
お前は死なずにすむだろう」
私は黙って語らなかった 生きるか死ぬかの状況なのに
その時私は親友の妻の腕に抱かれていたのだから

**
今、彼女は長く黒いヴェールで顔を覆って丘を上がり
夜の風が嘆くように吹き付ける頃ひそかに私の墓を訪れる
誰もそのことを知らず、見てもいない
私以外の誰も

絞首台は高くそびえ、死はすぐそこにある
彼女は群集の中に紛れ、涙を見せることはない
でも時に冷たい風がむせび泣く夜
長く黒いヴェールに身を包んだ彼女は私の墓に涙を落とすのだ


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