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俺とボビー・マギー[私の好きな20世紀の唄たち]vol.29 [20世紀の歌]

Me And Bobby McGee (俺とボビー・マギー)
   written by Kris Kristofferson
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作者のクリス・クリストファーソン(舌をかみそうな名前だ)はテキサスの出身。オックスフォード大を出て,作家を志望した時もあったようだが,その後陸軍士官学校に入り,ドイツに4年間従軍した後ナッシュビルに移ってカントリーミュージックのシンガー&ソングライターになったという経歴の持ち主である。経歴はそれで終わらず,リタ・クーリッジとの3年間の結婚生活の前後から映画俳優としても活躍し出し,’73『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』’74『アリスの恋』’76『午後の曳航』’76『スター誕生』など多数出演していてそちらの方で知っている人の方が多いかもしれない。『午後の~』は三島由紀夫の小説が原作ということもあって,発表当時見た覚えがある。

この曲は作者クリストファーソンの初期の作品であるが,自身の歌でヒットする前に,あの伝説の女性ロックシンガー "ジャニス・ジョップリン" のヒットで有名になった曲である。ジャニスはこの曲を含むアルバムの録音中にヘロイン中毒で急死した。27才の死はその後伝説になり,皮肉なことに死後の70年に発表されたアルバムとこの曲は初の全米№1ヒットになったのである。

この曲で「俺」と一緒にヒッチハイクの旅をしている「ボビー・マギー」は彼の愛犬だということを以前聞いたことがある。それがふさわしいような気もするし,人間の女性であってもよいとも思う。ここで歌われている「自由」の定義はなかなか強烈だ。「自由」という概念は様々なとらえ方ができる不思議な言葉だ。制度や身分的な自由から心の自由に至るまで幅広いし,時の流れの中で,あるいは一連の行動の中でも,今自由であることが次の瞬間に不自由に変わってしまうこともあるだろう。「自由=失うものがなにもない状態」というのは自由という概念のの一つの究極の形なのかもしれない。 "自由 "に "きままに" 生きている,と思いながら実は家族などの人間関係や仕事上の制約に意外なほど縛られていることはよくあることだと思う。「無意識」の中の不自由さと闘うことは本当に難しい。

仏教における「出家」の発想に似たこの「自由」の定義が出家のそれと確実に違うのは,「失うものがなにもない」という状態が「俗世の全てを捨て去る」ということによってでなく「その時を懸命に生きようとする」ことによってもたらされるという点だろう(究極では一つのものかもしれないが)。作者の奔放な生き方はこの歌を体現しているということもできるようだ。翻って自分自身を見つめると,もう少し若いころに比べて「囚われるもの」が少し増えたかな,としみじみ思ったりもする今日この頃ではある。
(初出03.02.26)

youtubeはSheryl Crow & Kris Kristofferson
https://www.youtube.com/watch?v=UKJ-49RbIjA
Janis Joplin
https://www.youtube.com/watch?v=N7hk-hI0JKw

俺とボビー・マギー(大意。原詩は検索してみてください。)

バトン・ルージュですっかり無一文になって,列車に向かいながら
俺はすり切れて色あせたジーンズのような気分でいる
ひと雨来る前にボビーがディーゼル車を止めて乗り込み
俺たちはニュー・オーリンズに向かったんだ
俺はバンダナの中からハープを取り出して
ボビーの歌うブルースに合わせて悲しいメロディを吹いた
それに合わせるようにワイパーがリズムを刻み
ボビーが手拍子をとり,しまいに俺たちは運転手の
知っているあらゆる唄を歌いまくった

自由ってのは何も失うものがないってことさ
そして自由ほど価値のあるものなんてないのさ
いい気分になるのは簡単さ,ボビーがブルースを歌うときだ
俺にはそれだけで充分なのさ
俺とボビー・マギーにはそれだけで充分なのさ


ケンタッキーの炭鉱からカリフォルニアの日差しの中へ行く道中
ボビーは俺と魂を共有してくれた
俺が何をするときもいつもそばにいて
夜毎俺を寒さから守ってくれた
サリナスの近くのどこかで彼女は行っちまった
安息の地を求めてね(俺もうまくいけばいいと思ってるんだ)
俺はボビーと一緒に暮らしたたった一日の昨日と
たくさんの明日を取り替えてもいいぐらいさ

自由ってのは何も失うものがないってことさ
彼女はそれだけを残して去って行ったのさ
いい気分になるのは簡単さ,ボビーがブルースを歌うときだ
俺にはそれだけで充分なのさ
俺とボビー・マギーにはそれだけで充分なのさ

Me And Bobby McGee



The Best of Kris Kristofferson


パール


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