映画「百日紅~Miss HOKUSAI~」 [映画]
映画サイトをパラパラと見ていると「百日紅(サルスベリ)」という映画が目に付いた。アニメらしいが、原作者が漫画家で江戸風俗研究家の杉浦日向子さんだという。彼女は昔『コメディーお江戸でござる』という番組で、お芝居を上演した後でその芝居での時代考証を判定しておちょくるという演出であった。特に見ようと思ってみていたわけではなかったが、着物姿の日向子さんのおっとりとした語り口と共に妙に記憶に残っている。
彼女の漫画代表作「百日紅」を、“大人が泣けるアニメーション作家”として著名らしい(寡聞にして存じ上げず)原恵一監督がアニメーション映画化したのだという。
映画を観てまず思ったのは、「日本のアニメはこんなに進んでいるんだなあ」ということであった。お話はいまや世界的に有名な浮世絵師・葛飾北斎の娘で、同じく浮世絵師として活躍した女性・お栄の目を通して、幕末の江戸の町で芸術至上主義的に生き抜いたお栄父娘と北斎の弟子たちの姿を描いたものである。大川のほとりの江戸下町の風情が妙にリアルに感じられるのだ。
ディズニーのアニメやジブリの世界とも違う、妖怪たちが跋扈する非現実の世界と現実の人間たちの世界がシームレスにつながっているような世界(明治維新のたった18年前なのだが)を見事に描ききっているように感じられた。
北斎の絵自体が、写実的であって写実離れをしているというところがあるのだが(そこに印象派の画家たちも惹かれた?)、非現実的な世界を含めて眼前に現れたものをひたすら活写しようと追求していった結果なのだなあ、ということが自然と納得させられた。
江戸期は決して世界から孤立した前近代ではなく、近代につながる成熟した時代だったのだ、というのは近年よく言われているが、それは近代的な発想(時代は未来に向かって進化し続けている)などとは違って、北斎たちのようにひたすら本物を追及していく中で生まれたものなんだなと思われた。さらに飛躍して「モノづくり日本」の原点のようなものまで感じるのは私だけだろうか。
とまあ、支離滅裂な感想を書いてしまったが、それほどインパクトが強かったということでお許し願いたい。江戸の町や北斎に興味のある方は是非観るべき映画だ、と思ったことだよ。
11/12から サンフランシスコのメキシコ街の映画館で上映...
http://www.roxie.com/ai1ec_event/12768/?instance_id=16304
by サンフランシスコ人 (2016-11-12 03:59)
サンフランシスコ人さん、それは素晴らしいことですね。ところで字幕なんでしょうかね。
by hobo (2016-12-03 16:40)