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Another Lonesome Day [私の好きな20世紀の唄たち] vol.67 [20世紀の歌Ⅱ]

Another Lonesome Day (Another Lonesome Morning)
    written by Wendy Thatcher

Wendy Thatcher with Eddie Adcock and IInd Generation (June 1970)
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今やっているバンドでこの曲を演ることになり、改めて誰が書いた歌なのかな、とクレジットを見ると。70年代初めに II Generation でリードボーカルをしていた Wendy Thatcher だった。彼女はニューグラスの時代の幕開けを象徴するような女性シンガーだったように記憶している。"Head Cleaner"というアルバムの中で "Virginia"という曲を作り歌っていたのだが、その後バンドを離れている。youtubeで検索しても90年ごろに"kitchen tapes"という自宅で録音したものが2・3あるだけで、この曲を彼女が歌っているものは見つからなかった。

私がこの曲を知ったのは The Seldom Scene の "Act 3"(73)によってであり、次いで The Cox Family の "Beyond The City" (95)であったが、他にも多くのアーティストによってカヴァーされている。エミルー・ハリスのものが有名なのかな。
The Seldom Scene
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The Cox Family
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Emmylou Harris
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歌詞を見てみると、恋人に去られて一人ぼっちで過ごす日々をかみしめる中で、改めて彼女(彼)が自分に必要だったんだと気づく、という内容である。"Bobwhite" って何?と調べると、ヴァージニアの山野に棲む野鳥で日本名では「コリンウズラ」というウズラの一種らしい。
Bobwhite
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求愛の鳴き声が可愛い鳥なんだろうな、とその時は納得していたのだが、少し経って「鶉」と漢字で表してみると、日本の和歌の中でも、鶉が恋人を偲び求める象徴として使われていることを思い出した。一首を例に挙げると、
「夕されば野辺の秋風身にしみて鶉(うづら)鳴くなり深草の里」(藤原俊成)がある。
深草の里。
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この歌は『伊勢物語』123段を踏まえて作られた本歌取りの歌で、昔教室で教えた記憶がかすかによみがえってきた(笑)。恋人と別れてからの日々の中で、夕暮れ時しみじみとした気持ちでたたずんでいると、鶉の鳴く声がした。別れた恋人が自分を求めて泣いているかのように(あるいは自分がその恋人を偲んでいるかのように)聞こえることだよ、というほどの内容だが、海を隔てた二つの国で「鶉」という鳥がほぼ同じ趣の歌題で取り上げられていることに不思議さを覚えた。

世の中に別れの歌は山ほどあるが、親しい人の<不在>を歌ったものは意外と少ないのかもしれない。私がこれまで取り上げてきた中ではジャニス・イアンの「我が心のジェシー」ぐらいだろうか。これから先の日々を考えると、この歌がいっそう愛おしいものに感じられてくるのであったよ。

ところで蛇足であるが、II Generation の最初のアルバムのベーシストのクレジットが Bob "Quail" White となっていた。この曲と何か関係があるのかな。少なくとも曲想のインスピレーションは受けたのかもしれないが。

Wendyは2017年に亡くなられたそうである。R.I.P.

youtubeは以下のものを。本人のものが見つからないのが寂しい。

The Seldom Scene - Another Lonesome Day
https://www.youtube.com/watch?v=G_TMlkJ_lNc

Tony Rice Another Lonesome Day
https://www.youtube.com/watch?v=YoazxkGzyNY

Emmylou Harris - "Another Lonesome Morning"
https://www.youtube.com/watch?v=z7P5Kuo3zSs

The Cox Family ~ Another Lonesome Morning
https://www.youtube.com/watch?v=s_QtsIPqPyE

あの人のいない朝 (大意。原詩は検索してみてください。)

あの人のいない寂しい朝がやってくる
長く孤独な一日がまた続く
もう彼女のいない日々を過ごさねばならないと 
朝の空気がそれを伝えてくれる

これまでとは違う孤独な朝が訪れても
お前はそれほど気にならないと思っていた
けれど朝のそよ風に吹かれると
彼女がそばにいてくれたらと思っている自分に
ふと気付かされる

森のウズラは古いラブソングを歌い続ける
懸命に相手を喜ばせようと
お前は彼女が昔好きだったその声を聞く
木の葉のざわめきを通して
木の葉のざわめきを通して

彼女を失ってお前は気付く
彼女にずっとそばにいて欲しかったんだと
そしてお前は知ることになる
これから訪れる全ての新たな孤独な朝が
新たな淋しい一日をもたらすことを
新たな淋しい一日を…


Act Three


Beyond the City


Cimarron


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