SSブログ

汽車を待つならず者のように[私の好きな20世紀の唄たち]vol.38 [20世紀の歌Ⅱ]

guy.jpg
Desperados Waiting for a Train
by Guy Clark

私がこの歌を初めて聴いたのはリタ・クーリッジの74年のアルバム " Fall Into Spring " からであった(やっぱり女性ボーカルが好きなんやなあと言われそう、それが何か?ww )。冒頭に " RED RIVER VALLEY " のメロディが流れ、それにかぶさるようにリタの歌が入ってくる、というドラマチックな構成が印象的であった。その後CDの時代になってしばらくして同じアルバムを探したが、アルバムもこの曲の入っているベスト盤も出ていなかった。今回この稿を書くにあたって youtube でリタの歌と再会したのは何よりうれしいことだった。 youtube は偉大だww

あのころは誰が書いた曲かということはあまり眼中になかったが、かなり後になってからこの曲が テキサス出身のカントリー系シンガー・ソングライター、Guy Clark が75年に発表したものだと知った。前に( vol.4で ) 紹介したJERRY JEFF WALKER とかなり近い関係にあるらしい。そういえば上記のリタのアルバムに入っている " A Nickel For The Fiddler " という曲も彼の作のようで、リタがとり上げてデビューに至ったということなのかもしれない。

Desperado(ならず者)という語はイーグルスの歌( vol.3 参照)でも使われているが、スペイン語っぽい語感なのでメキシコとの国境付近に跋扈していたならず者(流れ者)を指すのかもしれない。テキサスからカリフォルニアにかけてはメキシコ領だった時代もあったようだから。曲の内容は作者自身らしい若者と、若い頃は石油掘りでぶいぶい言わせていたらしい老人との出会いからその死までが年代記風に語られている。世間からは爪弾きされているかもしれないその老人を、若者はリスペクトしている。存在そのものが世界と対峙しているかのように受け止めているのだろうか。なんかそういう曲が多いなあ、自分がとり上げる曲は。でも JERRY にとっての Bojangles , Dirt Band にとっての Uncle Charlie , Bill にとっての Uncle Pen など身近な年長者への敬愛が感じられるものは多い気がする。今の日本では失われつつあるのかもしれないなあ。

歌詞の最後の " Come on Jack, that son of a bitch is coming " という部分はよくは判らないが、世間からはそう見られているよ、ということなのかもしれない。ジョニー・キャッシュ、クリストファーソン、ウィリー・ネルソン、ウェイロンら大御所たちが組んだバンド " The Highwaymen (country supergroup) " のライブ映像を見ると、この部分で喝采が起こるのが印象的であった。またリタの歌詞では " sweetest child " と言っているように聞こえる。最も卑俗なものが最も聖なるものである、という宗教的な意味合いもあるのかな、と思われる。

この曲を作ったときは30代だった作者も、もう70代半ばになる。そういうことを思いながら今聞くと味わい深さがさらに増してくるような気がする。

youtube はまず本家のもの
Guy Clark Desperados Waiting For The Train(Old Number 1°)
https://www.youtube.com/watch?v=VbB5TRLF9mo
リタのものも
Rita Coolidge - Desperados Waiting for the Train
https://www.youtube.com/watch?v=5DjlaEcawoc
最後にハイウエィ・メンのライブ映像を
The Highwaymen / Desperados Waiting For A Train
https://www.youtube.com/watch?v=N_jFpa8WzYw

汽車を待つならず者のように (大意。原詩は検索してみてください)

俺は「赤い河の谷間」を歌っていた
爺さんははキッチンで泣いていた
70年の人生を振り返り
「神よ、どうして私の掘る油田は全て涸れてしまうのか」と
俺と爺さんはながい友達だった
汽車を待つ無法者のように
汽車を待つ無法者のように

奴は流れ者の油田掘りだった
世の中のことを教えてくれる先生だったよ
飲みすぎて運転できないとき俺に車の運転を教えてくれた
ウィンクして女の子と遊ぶ金をくれたよ
俺たちの暮らしぶりは懐かしい西部劇のようだった
汽車を待つ無法者のように
汽車を待つ無法者のように

俺がなんとか一人歩きできるようになった頃
奴は俺を「緑の蛙のカフェ」というバーに連れて行ってくれた
そこではビール腹の老人たちがいて
大法螺を吹きながら四六時中ドミノに興じていた
まだガキだった俺のことを爺さんの相棒と呼んでいたよ
汽車を待つ無法者のように
汽車を待つ無法者のように

ある日ふと気がつくと爺さんはもう80を過ぎていて
茶色いタバコのヤニが顎のあたりに染み付いていた
俺にとって奴はこの国のヒーローだったんだ
なぜか皆と同じような格好をして
ビールを飲み「月と42」というゲームをしていた
汽車を待つ無法者のように
汽車を待つ無法者のように

爺さんが死ぬ前の日爺さんに会いに行った
俺はすっかり大人になり奴は今にも逝きそうだった
俺たちは目を閉じあの日のキッチンを想った
あの古い歌に別の詞をつけて歌った
「来な、ジャック、ろくでなしがやってくるぞ」
汽車を待つ無法者のように
汽車を待つ無法者のように…



Old No. 1 / Texas Cookin


The Highwayman Collection


nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0