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小説「信長の首」 [読書]

小説「信長の首」
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図書館でふと題名に惹かれて借りてみた。明智光秀の子孫が本能寺の変の「新説」を書いたというのでそれを探していたのだが、それはまたいずれ読んでみようと思っている。

この本はそれほど評判になったわけでもなさそうで、amazon で調べても13年にでた文庫版がすでに絶版だった。作者の秋月達郎という人も知らなかったが、時代小説からミステリー・ファンタジー・架空戦史小説まで幅広く書いている人らしい。この本でも4つの小品が収められているが、いずれも歴史上の人物を取り上げながらかなり空想を働かせて書いているようだ。

表題作の「信長の首」も、発見されていないとされる信長の首の行方をテーマとしたもので、「真相」を期待した分にはちょっと拍子抜けの感もあった。他にも出雲阿国と名古屋山三郎との関係(いずれも歌舞伎の祖といわれている)を描いたものなど、伝説の域を出ないだろうと思われるが、面白く読めた。雑誌「宝石」などに掲載されたものであるためか、やたらと「濡れ場」が多いのも特徴といえるのかなww
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一番興味深く読めたのは、荒木村重と信長の関係を描いた「村重好み」であった。前に「散策」で書いた伊丹の「有岡城」の主であった村重がなぜ信長に叛旗を翻したのか、については諸説あるが、ここでは「茶器」と「有岡城」が原因であるという見立てである。

信長が酒をたしなまなかったために茶道にのめりこんだ、というのは本当かどうかはわからないが、そういう些細なことが発端で「茶文化」にまで至るというのはなかなか面白い。それはともかく、茶道・茶器に関しても第一人者を自認している信長に対して、これまた茶道に関しては一家言持っている村重が、つい「自己主張」してしまったのが、二人の齟齬を生んでしまったというのだ。

信長という人は相当気難しい人物のようだが、秀吉などは他の平伏しまくっている家臣達とは違って、上手に持ち上げながらも言いたいことは言う、というように上手くやっているように見える(あくまで小説の上でのことかもしれないが)。村重も取り立てられた時は非常に気に入られていたのだろうが、「茶器」に関しては主従関係の「分」を少し超えてしまったのだろうか。

「有岡城」も「安土城」より先に「天守閣」や「総構え」という革新的なことをしてしまったために、信長の勘気を蒙ったということである。村重は信長の「勘気」を恐れていたという説も多いのだが、それでもなお「勘気」を蒙るような言動をしてしまったのか。少しタイミングが違えば「おぬしなかなかやるな」という良好な関係にもなったような気もするし、村重のほうにも弟子が師匠に「甘える」ような気分が出ていたのかもしれない。いずれにしても人間関係の「機微」は難しいものだな、とこの年になっても考えさせられた小説であった。

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