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MY BACK PAGES[私の好きな20世紀の唄たち]vol.53 [20世紀の歌Ⅱ]

MY BACK PAGES(私の過去帳)
     written by Bob Dylan

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ボブ・ディランがノーベル文学賞を受賞したからというわけでもないが、再びとり上げてみよう。実は半年前ぐらいにこの曲について書いてみようと思ったのだが、詞が難解すぎてお手上げ状態だったというのが真相である。今回再トライするにあたって、いくつかの訳詩をwebで見たのだがそれでも分らない。だから今のところ判ったのはここまでという状態で書くのである。
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この曲は1964年に発表されたアルバム " Another Side of Bob Dylan" に収録されている。それまでのアルバムで、「風に吹かれて」「戦争の親玉」「第3次世界大戦を語るブルース」「時代は変る」などのプロテストソングが脚光を浴び、時代の代弁者のようにもてはやされたことに嫌気がさしたのか、このアルバムではプロテストソングといえる歌は歌っていない。レッテルを貼られるのが何よりも嫌いなのは今回の賞に対する対応(といっても今のところ無言を貫いているだけだが)からも窺い知ることが出来るだろう。
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私はこの曲を何で知ったのだろう。ディランのオリジナルアルバムで知ったのではないことは確かだ。ディランの初期に彼の作品を多く取り上げて、世に知らしめたのは PP&M、Joan Baez、そして The Byrds といっていいだろう。特に The Byrds はディランの "Mr. Tambourine Man" でデビューしたぐらいだから、実に多くのディラン・ソングを歌っている。あるいは92年の "Bob Dylan's 30th anniversary concert" あたりかもしれない。ラスト辺りで Bob Dylan-George Harrison-Tom Petty-Eric Clapton And Friends という豪華メンバーでやっているが、基本のアレンジはバーズのもののようである。youtube でもノーベル賞の余波か「この国では視聴できません」というものがいくつかあるのもご愛嬌?
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曲の内容は象徴的な言葉が多くて分りづらいが、プロテストソングを多く歌っていた時期の自分が、やや頭でっかちでスレテオタイプだったかもしれない、という自己批判的な歌なのかな、という視点で見ると少し分ってくるような気がする(少しだけど)。若い頃はやや性急に自分と世界を理解しようとし、また理解した気になっていることは多いものだが、歳を重ねていくと別の見方も出来るようになっていく。その一方で分別臭くもなっていくのも事実だが、ディランの「常に今より柔軟な感性を持っていたい」という姿勢、そしてそれを75歳になる現在まで持続しているところが何よりすごいことだと思う。 "Younger than Yesterday" はこの曲が収められたバーズのアルバムの題名であるが、自分もあたう限りこのように生きていきたいものだ、としみじみ思ったことだ。
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youtubeはまずディラン本人のもの。
Bob Dylan - My Back Pages (1998)
https://www.youtube.com/watch?v=LeEkYvrdZvo
続いてバーズのもの。上とアレンジが違うのが面白い。
The Byrds - My Back Pages (1967)
https://www.youtube.com/watch?v=h80l4XIPJC4
30周年コンサートのリハーサルビデオ。珍しくも興味深い。
Bob Dylan-George Harrison-Tom Petty-Eric Clapton And Friends. A Rehearsal
https://www.youtube.com/watch?v=wtQKE4I8U-M
ジャクソン・ブラウンとジョーン・オズボーンのデュエット。これいいね。
Joan Osborne & Jackson Browne - My Back Pages
https://www.youtube.com/watch?v=Vz_UiBvxOy0

私の過去帳 (大意。原詩は検索してみてくださいね。)

私の耳に縛り付けられた真紅の炎は
高く舞い上がり
巨大な罠が燃え上がる路上に仕掛けられていた
頭の中の思念を自分の武器にして
「先端で会おう」と言った私の
眉の下は高慢な光に満ちていた

ああ、その頃の私の心はむしろ年老いていて
今の私の方が若く柔軟だ

半ば壊れかけた偏見に踊らされていた私は
「全ての憎悪を切り裂け」などと叫んでいた
人生は白か黒に見極められるという虚言を
頭の中だけで考え喋っていた
昔の銃士たちの考えたそれなりに深く構築された
ロマンチックな物語を夢想していた

ああ、その頃の私の心はむしろ年老いていて
今の私の方が若く柔軟だ

見せかけだけの嫉妬心から
古代の歴史の暗誦に至るまで
少女たちの顔は前向きの路を示していた
でもそれは死せる伝道者たちにより
無自覚に投げ出されたものに過ぎなかった
いずれにしても

ああ、その頃の私の心はむしろ年老いていて
今の私の方が若く柔軟だ

教授を自称する男の口からは
愚かしいほどに真面目な言葉が
飛び出した
「自由とは学校では平等だということにすぎない」
「平等」私はこの言葉をまるで
結婚の誓いのように常に口にしてきた

ああ、その頃の私の心はむしろ年老いていて
今の私の方が若く柔軟だ

兵士のように身構えて私は
教えを説くつまらない雑種犬に狙いを定めた
自分が説教をたれた瞬間に
今度はおのれ自身が自らの敵になることに
恐れも抱かず
私の存在は舳先から船尾まで暴動と反乱にみちた
混迷する船に導かれていた

ああ、その頃の私の心はむしろ年老いていて
今の私の方が若く柔軟だ

そう、私の神は抽象的思考の脅威にあっても
厳として立ち、その姿は
あまりに高貴で無視できなかった
神は私をだまし、
おまえには守るものがあるのだと思わせた
私は、善と悪という二律を極めて明晰に
疑いもなく定義してみせた

ああ、その頃の私の心はむしろ年老いていて
今の私の方が若く柔軟だ


昨日よりも若く(紙ジャケット仕様)


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